Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 政昭 慶應義塾大学, 理工学部, 名誉教授 (20146723)
伊藤 伸介 明海大学, 経済学部, 講師 (90363316)
稲葉 由之 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (80312437)
小林 良行 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (80553643)
瀧 敦弘 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (40216809)
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Research Abstract |
本研究の目的は次の3点である。 (1)官庁統計について,各統計のサンプリング方法,時系列情報,調査項目の特性などを考慮に入れながら適切な秘匿措置を施すとともにリスク評価を行い,プライバシー漏洩の観点から見て安全で,しかも分析の面から見ても十分な情報量を持つ個票データや表形式データを作成するための理論構築を行うこと(2)個票データについて,有用な情報を残すための集計方法や統計量の算出方法を提案するとともに,その情報から,安全で,しかも元の個票データと同程度の情報量を持つ疑似個票データの作成を行うこと(3)研究過程において得られた知見を空間統計やPPDMなどの他の領域のデータへ応用すること (1)については,今年度も確率分割モデルの性質に関する研究を中心に順調に研究が進められた。また,単純無作為標本を事後層化することによるリスク評価の改善なども試みた。さらに,秘匿と有用性の評価の双方を考慮に入れた分析方法についても議論が深められている。(2)については本研究の成果を取り込む形で,独立行政法人統計センターにおいて,疑似個票データの試行的提供が行われた。(3)については,空間統計への応用を目的に,分析結果に影響を与えない秘匿措置についての提案がなされた。また,医学統計データの公開方法の研究に関して,これまで蓄積されてきた研究成果の提供と問題固有の新たな課題に対する検討を行っているところである。 これらの研究成果については,2011年9月4日~7日に九州大学で開催された統計関連学会連合大会などの学会やシンポジウムにおいて報告を行うとともに,各種研究集会や研究会などでも報告を行った。2011年10月21日,22日には,統計数理研究所において研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究」 を開催し,本研究に関連する研究者,官庁統計の実務者とも意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した目的のうち,(1)については当初の予定通りに研究が行われた。(2)については,元の個票データと疑似個票データの間に(多次元の)集計表を挟まなければならないとの統計法の解釈が示され,新たな方向を模索しなければならなかった。(3)については医学統計など,当初予定していなかった分野とも連携することができ,当初の計画以上に進展したと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」に記載した目的のうち(1)と(3)については,順調に研究が進められているため,来年度もこれまでの研究をさらに進めていく予定である。ただし,(1)についてはリスク評価に用いる確率分割モデルの研究に集中しがちであるため,秘匿と有用性の評価を同時に行う方法の研究,表形式データに関する秘匿方法やリスク評価方法の研究,サンプリング方法などを考慮に入れたリスク評価方法の研究,事後層化などを用いたリスク評価の改善方法の研究など,幅広く取り組みたい。(2)の疑似個票データ作成の研究では,官庁統計への適用、とは切り離して,理論的な研究を進めていきたいと考えている。
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