2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22300100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 正弘 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (90195339)
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Keywords | 蛋白質 / 立体構造予測 / 水和エントロピー / 自由エネルギー関数 / 積分方程式論 / 形態熱力学理論 / フラグメントアセンブリ法 / ケミカルシフト |
Research Abstract |
我々が既に開発した自由エネルギー関数Fおよびその2つの成分である水和エントロピーSと脱水和の全ペナルティーΛを用いて,実験で得られた蛋白質天然構造モデルのキャラクタリゼーション法を開発し,ユビキチン単量体の数多くのモデルに対して例証した。この方法は,単なる幾何学的な観点からではなく,水和の熱力学の観点からモデルを評価するものである。対象としたモデルは,X線結晶解析で得られた3種類のモデル(X線モデル)とNMRから得られた10種類のモデル(NMRモデル)である。後者は,さらに2つのタイプに分けることができる。タイプ1は単一の天然構造に対する候補構造であり,タイプ2は溶液中の構造ゆらぎを表現した構造アンサンブルである。全体的にX線モデルの方がNMRモデルよりも低いFの値を持つという結果が得られた。タイプ1のNMRモデルでは,X線モデルに近い構造ほどFが低くなるという強い傾向が見られた。一方,タイプ2のモデルには,X線モデルからずれた構造をとりつつも低いFを維持しているモデルも数多く見出された。タイプ1とタイプ2の両方で,「構造計算に有効に組み込まれた拘束条件が多く,より構造が収束しているNMRモデルほどFが低くなる」という強い傾向が認められた。ΛとSに注目し,分子内水素結合形成の確保の状況や主鎖・側鎖のパッキング効率を調べることもできた。Fは,新しく報告されるNMRモデルの評価,複数の候補構造からの最良構造の選出,明らかになったモデルの弱点の解消などに適している。Fを用いて,NMR実験から得られた拘束条件に基づいて天然構造モデルを一から作成する方法の開発に着手した。拘束条件をどこまで減らせるか,ケミカルシフトのみで良好なモデルが得られるかについても検討した。拘束条件が無くなった場合が立体構造予測に該当し,それにも繋がる研究方向である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NMR実験で得られた構造情報(拘束条件)を満たす蛋白質天然構造モデルを作成するという目標を設定し,拘束条件を徐々に減らしていっても良好なモデルが得られるようにするという新たなstrategyを採用し、ある程度の成功を収めている。拘束条件ゼロに該当するのが第一原理からの立体構造予測であり、それが最終目標である。最終目標はまだ達成できていないが、それに向かって着実に前進したという明確な成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
NMR実験で得られた構造情報(拘束条件)を満たす蛋白質天然構造モデルを作成するという目標を設定し,拘束条件を徐々に減らしていっても(あるいはケミカルシフトのみから)良好なモデルが得られるようにする方法の開発を進める。また、これと並行させ、フラグメントアセンブリ法やレプリカ交換モンテカルロ法の中に我々の自由エネルギー関数を組み込んで、天然構造として最もふさわしい立体構造を特定する研究を進める。比較的小さな複数の蛋白質に対して実証したい。
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Research Products
(34 results)