2010 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚の獲得メカニズムに関する生理学的・分子生物学的解析
Project/Area Number |
22300126
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田 洋一 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00144444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 新 名古屋大学, 准教授 (90171420)
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 有毛細胞 / 機械受容 / マウスナー細胞 / 発火パターン / カリウムチャネル / 網様体脊髄路ニューロン / 耳石 |
Research Abstract |
本研究は,豊富な遺伝学的・発生学的背景を持ち,分子生物学的アプローチから生理学的・行動学的アプローチまでを駆使できるゼブラフィッシュの胚や稚魚を用いて,内耳から後脳のマウスナー(M)細胞までの聴覚路を対象として,(1)有毛細胞の「音感受性の獲得」と(2)M細胞の「音の特徴抽出」を達成するメカニズムを理解することを目的とした.本年度は,(1)に関しては内耳有毛細胞の分化と発達過程を形態学的・電気生理学的に調べ,内耳の発生初期において耳石形成に重要な役割を果たすtether cellと呼ばれる細胞に,stereocilia(不動毛)が生えて機械受容能を獲得して,最初の有毛細胞になることを見出した.この成果は,有毛細胞の形態的な発達と機械受容能の獲得を結びつけ,これまで長い間未知であった有毛細胞の音感受性獲得のメカニズムの第一段階を明らかにし,聴覚獲得に関する意義深い発見である(J.Neurosci.2011に発表した).(2)に関しては,M細胞の特徴的な単発発火が低閾値型カリウムチャネルを形成するKv1αサブユニットとKvβ2サブユニットの共発現による事を,in situ hybridizationによるサブユニット発現の解析や,アフリカツメガエル卵母細胞を用いたチャネル再構成およびゼブラフィッシュM細胞からのin vivo whole-cell記録などによって明らかにした.興味深いことに,M細胞とは発生や形態が類似して相同ニューロンと呼ばれる後脳ニューロンや発達初期のM細胞は,成熟したM細胞とは異なり連続発火するが,それらの相違もこの2種類のサブユニットの発現で説明される.これは同じように生まれながら異なる特性を持つようになる脳ニューロンの機能的な分化メカニズムを明らかにしたものとして注目される成果である.現在,論文にまとめて投稿準備中である
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