2011 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞における血流刺激のメカノトランスダクション機構の解明
Project/Area Number |
22300150
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 希美子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00323618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 譲二 獨協医科大学, 医学部, 特任教授 (20159528)
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Keywords | 流れ剪断応力 / 細胞膜 / 血管内皮細胞 / カベオラ / イオンチャネル |
Research Abstract |
血管内面を一層に覆う内皮細胞は血圧の調節、血液の凝固・線溶、蛋白の選択的透過など、血管機能の制御に中心的な役割を果たしている。近年、内皮細胞の働きがホルモン、サイトカイン、ニューロトランスミッターといった化学的刺激だけでなく、血流に起因するshear stressなどの力学的刺激によっても調節を受けることが明らかになってきた。しかし、そうした力学応答の仕組みはまだ十分解明されていない。以前我々は、血管内面を覆う内皮細胞がshear stressを感知し、ATP作動性のイオンチャネルP2X4を介するカルシウム・シグナリングを起こすことで、力学的刺激であるshear stressの大きさを細胞内カルシウム濃度に変換することを明らかにした。本年度の研究では、shear stressによるP2X4の活性化機構を明らかにすることを目的とした。P2X4はshear stressにより放出される内因性ATPにより活性化される。そのATPの放出過程をリアルタイムで画像化する独自の方法を確立した。新規に合成したビオチン化ルシフェラーゼ蛋白を内皮細胞膜上に固定化し、ルシフェリン溶液を灌流して細胞にshear stressを負荷すると、細胞内から放出されたATPと反応して化学発光が起こるが、その発光を冷却型EM-CCDカメラにより捉えることに成功した。細胞膜には、コレステロールとスフィンゴ脂質に富むカベオラと呼ばれる脂質ミクロドメインがあるが、そのマーカー蛋白であるcaveolin-1が多く発現する局所から、ATPが放出することが明らかになった。さらに、予め細胞質内にカルシウム蛍光指示薬であるFluo-4を負荷し、同一細胞でATP放出局所とカルシウム・シグナリングの発火場所を比較した所、両者が一致していることが確認された。以上の結果から、shear stressに伴うP2X4の活性化が細胞膜カベオラで起き、細胞内へカルシウムを流入させる機序が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画した1.P2X4チャネルを介したカルシウム流入反応と、2,内因性ATPの放出反応について、我々が独自に確立した新しいイメージングシステムを用いることで、リアルタイムで起こる現象の詳細を明らかにし、その内容を英文論文J.Cell Sciに発表した。尚、当論文はIn This Issueに選ばれた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成22年度より行ってきた研究を継続すると共に、これまでの研究で明らかになった知見を加える。特に、shear stressのメカノトランスダクションに重要な役割を果たすP2X4を介するカルシウム・シグナリングが細胞膜カベオラで起こることから、特に、カベオラがshear stressの感知に果たす役割について、以下の項目に沿って検討する。 1.細胞膜の流動性:細胞膜における流動性の変化を蛍光分子のフォトブリーチングにおける消光の可逆性を利用した蛍光消光回復法(FRAP)を用いて行う。Shear stress負荷時、あるいは細胞膜ミクロドメインであるカベオラ/ラフトを破壊するの作用のあるMethylβ cyclodextrinやFilipinで細胞を処理したときのFRAPを共焦点レーザ顕微鏡で測定する。 2,膜リン脂質の相転移:細胞膜を構成するリン脂質は二分子層構造をとる。細胞膜の相状態の変化を感知する蛍光プローブLaurdanと2光子レーザ顕微鏡を用いて細胞膜の物理的性状の変化を解析し、カベオラ/ラフトをリアルタイムで画像化する。Shear stressが惹起する相転移の変化やカベオラ/ラフトの動態変化を解析する。さらに人工脂質二分子膜で構成されるリポソームを作製し、同様のイメージングを行うことで膜リン脂質の相転移に及ぼすshear stressの効果を確認する。
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Research Products
(26 results)