2011 Fiscal Year Annual Research Report
栄養素代謝バランス統合制御システムの分子基盤と生活習慣病発症における役割
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22300237
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
竹谷 豊 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30263825)
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Keywords | リン / 栄養素代謝 / インスリン感受性 / 代謝バランス / グリセミックインデックス |
Research Abstract |
本研究では、栄養素代謝の相互連関を制御すると考えられている「栄養素代謝バランス統合制御システム」の分子実体を明らかにすると共に、生活習慣病発症における役割について明らかにすることを目的とし、主に、エネルギー代謝制御とリン代謝制御の相互連関の調節機構を明らかにするものである。本年度は、次の3つの項目について検討した。1.長期のリン過剰摂取が糖・脂質代謝に及ぼす影響についてラットを用いて検討した。高リン食(1.2%リンを含む)をラットに4ヶ月間投与すると、副甲状腺ホルモン等のリン利尿因子の分泌亢進により血清リン濃度の恒常性は保たれた。一方、経口糖負荷試験を行ったところ、驚くべきことに、高リン食投与群で食後血糖上昇の抑制、インスリン分泌量の低下を認め、インスリン感受性が亢進していることを見いだした。さらに、高リン食群では、内臓脂肪量も有意に低下しており、リンの過剰摂取により糖代謝が改善することを見いだした。2.ヒトを対象にした研究では、高グリセミックインデックス食品と同時に高リン食を単回摂取しても経口糖負荷試験における食後血糖上昇やインスリン分泌量には違いが見られなかった。しかしながら、糖とリンが同時に負荷される状況では、血管内皮機能の低下が観察された。一過性の糖・リン負荷と長期の負荷では、得られた結果が異なった。これは、長期負荷では、体内の栄養素代謝バランス統合制御システムの作用が作動し、栄養素代謝の恒常性維持に働いた結果と考えられた。3.これらの栄養素代謝恒常性研究の過程で見いだした栄養素代謝調節因子であるFGF21の空腹時・絶食時における栄養素代謝調節における役割について明らかにすることができた。次年度には、このモデルを用い、栄養素代謝バランス統合制御システムの分子実体の解明に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物モデルを用いて、リンの摂取が、実際に糖代謝に及ぼす影響を明らかにすることができ、栄養素代謝バランス統合制御システムの存在を見いだすとともに、分子実体解明に向けて解析目標を明らかにすることができた。また、概ね予定通りヒト試験も進めることができ、リン代謝と糖代謝の相互作用を個体レベルで評価できる技術の基盤が構築されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、初年度に細胞レベルで明らかにしたリンシグナルと糖シグナルのクロストークとその解析技術を、本年度明らかにした動物モデルでの解析に適用し、個体レベルで栄養素代謝バランス統合制御システムの分子実体の解明を試みる。また、ヒト試験のデータをさらに増やし、データの信頼性向上に努めると共に、ヒトにおけるリン代謝と糖代謝の相互作用の評価系の確立を目指す。
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Research Products
(15 results)