2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22300309
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 淳司 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40183842)
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Keywords | X線トモグラフィー / 木製文化財 / 樹種識別 / 放射光 / 揮発性有機化合物 |
Research Abstract |
H23年度のシンクロトロンX線μCT、VOC検出それぞれについて、成果は以下の通りである。また、新しい手法として近赤外法も検討項目に加えた。 1)シンクロトロンX線μCTにより識別 仏教伝来と深い関連がある狛犬を始めとした宗教関連品および茶室建築を始めとした建築部材の放射光を用いた3次元描画による樹種識別のため、松尾大社をはじめとして多くの協力を得た。文化財に使用される針葉樹のうちヒノキ・サワラ・ヒバ・ヒノキアスナロ・ネズコといった樹種は解剖学的特徴が酷似しているので、識別により客観性を持たせるために、現生材をもちいて、分野壁孔の大きさ、個数、開口部の角度など、その形態を定量化(数値化)して評価するための基盤情報のデータベース化を行なった。 2)VOCによる識別 上述の重要針葉樹材は特徴的な匂いを有することから、VOCの判別分析を行い検討した。本学材鑑調査室に保管する標準サンプルより、上記6種の針葉樹を各20個体前後集め、粉末試料を作製した。また参照サンプルとして古材について調べた。 現生材の検討から、スギとネズコ、ヒノキとアスナロが可能であることが判明したが、古材については経年による匂い成分の劣化のためか、現生材ほど有効な結果は得られなかった。 3)近赤外法による分析 匂い分析に用いた粉末サンプルから錠剤を成形し、これをサンプルとした。2)のサンプルを検討した結果、スギとネズコ、ヒノキとスギ、サワラとアスナロが識別できることが判明した。今後よりハンディーな反射型赤外分光装置で検討を加えることで、現地調査でも利用できる見込みを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
放射光によるCT像からの形態情報、およびVOC測定による心材成分由来の微量揮発性成分の分析手順と、データの解析手法がほぼ構築された。さらに加えて、近赤外法を用いたより簡便な識別手法についてもヒノキ科、およびハードパインの特定種の識別に利用できることが明らかに成った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はより識別の精度をあげること、さらには識別の必要が高い樹種間で、形態、VOC,近赤外の情報を総合的に判断して識別可能な樹種を増やすことを目標とする。また、特定細胞に含まれる油脂成分も識別の根拠になることが知られているので、そのような特殊な樹種についてはラマン分光も併せて検討する。
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Research Products
(5 results)