2011 Fiscal Year Annual Research Report
薬用資源の文化財分析法を用いた新規標準化インデックスの探索
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22300310
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 京子 大阪大学, 総合学術博物館, 准教授 (00140400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮久保 圭祐 大阪大学, 総合学術博物館, 准教授 (70263340)
廣川 和花 大阪大学, 適塾記念センター, 准教授 (10513096)
川瀬 雅也 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (90224782)
東 由子 大阪大学, 薬学研究科, 研究員 (20512883)
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Keywords | 文化財科学 / 薬用資源 / 生薬 / 薬種国産化 / 松山本草 / 磁気共鳴法(MRI) / メタロミクス解析 / 森野旧薬園 |
Research Abstract |
本研究では、伝統医療文化に根ざした薬用資源(生薬)品質の国際的標準化を目指し、最新の文化財分析法を用いた新規標準化インデックスの探索を行うことを目標にしている。平成23年度は本草学的考察から国際標準化の定義を明確にするため、江戸期医療文化財の時系列的評価並びにメタロミクス解析を行い、対象候補生薬の選定と新規標準化インデックスとしての実用性を検証した。 【成果1】松山本草の702種の植物画について植物分類並びに本草学的文献から植物同定を行い、根拠と限界を一覧とした。森野旧薬園の境社会学的植生区分を適用した植物相を調査し、園内に生息する植物の時系列解析から大和の自然環境保全の指標を考察した。薬種国産化政策で育種・栽培されてきた薬用大和荷薬を対象にメタロミクス解析による基原同定鑑別手法を確立し、品質評価を可能にした。すなわち大和荷薬は栽培過程での選択圧に基づく品質の均一化が達成されており、標準化の可能性を示唆した。さらに切花初用など経済的付加価値を有する園芸種の選定の指標を明確にした。 【成果2】1920~50年に中尾万三・木村康一博士により蒐集された東アジア生薬標本資料の電子化及びリスト化に基づき、国内の関連機関(東大・京大博物館など)との比較実態調査を実施した。結果、阪大の当標本類が唯一その存在を裏付ける資料であることを明確にした。本資料の品質特性は、グローバルに市場流通する東アジア産生薬の標準化インデックスの客観化の一助であることを示唆した。 【成果3】蒲公英(Taraxacum:タンポポ属植物)を対象としてミクロトーム凍結切片法で作製した内部構造学的特性について、磁気共鳴法(MRI)による顕微イメージング測定と比較検討した結果、根部横断面に分布する乳管構造が鑑別指標となることを示唆した。テラヘルツ放射光分光法導入による生薬品質評価ツールの開発の基礎検討を行い、応用の可能性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
医療文化財(緒方洪庵の薬箱、森野旧薬園所蔵の草木葉譜や化石・鉱物標本類、1900年初頭の欧州生薬標本資料の復元)研究には、貴重資料の虫害被害や物理的損傷(資料の剥離・破損・喪失、退色)容器の破損による気密性の低下に伴う障害に対する情報不足のため、研究途上や終了後の復元処理など対策が容易でなく、予定以上の時間を必要としている。文理融合系の学術雑誌が皆無に近く、論文投稿先からの審査拒否のため、論文化が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)蘭方移入と感染症パンデミック対策の薬史学的検証から、経験知による臨床実績を多変量解析により客観化することで、治療薬(活用生薬)の同定と品質の普遍的特性を明確にする。 (2)対象とした貴重標本の非破壊手法に、磁気共鳴法(MRI)による顕微イメージング並びにテラヘルツ放射光分光法を新規導入し、生薬品質評価ツールの開発・応用を目指す。 (研究を遂行する上での問題点)化石由来生薬『竜骨』の標準化インデックス研究には、埋蔵される地域(生薬産地)の地質情報や母岩採取が必須だが、調査遂行には性中国地質科学研究所並びに現地研究者との密な情報・資料提供が容易でないため迅速性に問題が残る。
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Research Products
(30 results)