2011 Fiscal Year Annual Research Report
バックグラウンド黄砂の動態と高所における大気液相化学および植生への影響評価
Project/Area Number |
22310022
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
渡辺 幸一 富山県立大学, 工学部, 准教授 (70352789)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴木 英治 富山市科学博物館, 学芸員 (10373482)
久米 篤 九州大学, 大学院・農学研究員, 准教授 (20325492)
青木 一真 富山大学, 大学院・理工学研究部, 准教授 (90345546)
中野 孝教 総合地球環境学研究所, 教授 (20155782)
石田 仁 岐阜大学, 応用生物科学部・フィールド科学教育研究センター, 准教授 (00397316)
|
Keywords | 大気化学 / エアロゾル / 同位体 / 黄砂 / 植生影響 / バックグラウンド / 立山 / 航空機 |
Research Abstract |
富山県の立山西側において、エアロゾル粒子粒径別個数濃度、オゾンや二酸化硫黄などの微量気体成分濃度、ガス状水銀、硫酸塩粒子濃度などの測定を行なった。2011年秋期には越境汚染や、弱いながら「バックグラウンド黄砂」の影響が観測された。霧水や降水を室堂平(標高2450m)、弥陀ヶ原(標高1930m)および美女平(標高977m)で採取・化学分析を行った。2011年9月には室堂平において露水の採取・化学分析を行った。高所においては、夜間に発生する露水中にも植生に有害な高濃度の過酸化水素が含まれることがわかった。また、スギ林、ブナ林などにおいて樹幹流や林内雨の採取・化学分析も行った。 2011年4月下旬には、室堂平において金層にわたる積雪断面観測を行い、層位構造等の観測や化学分析を行なった。主要イオン成分の他に、水銀、過酸化水素やホルムアルデヒド濃度の測定も行った結果、硫酸イオンなど人為起源成分とホルムアルデヒドや水銀との間に有意な相関がみられ、酸性物質とともに光化学生成物や水銀も輸送されているものと考えられた。また、積雪黄砂層についてストロンチウム同位体比の測定を行い、土壌粒子の起源について検討し、アジア大陸の乾燥地帯から輸送されてきていたことが確認された。 富山市(富山大学内)と立山・浄土山にスカイラジオメータを設置し、標高3000m内にある大気中のエアロゾル光学的特性を測定することが可能となった。観測データから、両地点での光学的厚さは一桁異なるものの、同様のエアロゾル粒子粒径分布が得られた。さらに、2011年6月に回転翼航空機により、富山県上空の大気環境観測を行った。 立山高山帯における大気から植生への湿性・乾性沈着量の評価を行ない、夏季においては霧などの湿性沈着が重要な影響を及ぼしていること、立山・浄土のハイマツ林における大気からの窒素負荷量が十分大きいことがわかった。また、立山ブナやオオシラビソ林などの植生調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立山での観測や植生調査などは概ね順調に進み、データが蓄積され、立山の自然環境の実態が明らかとなりつつある。ただし、標高2000m以上の高所で観測が可能な期間に、この2年間まとまった黄砂現象が観測されず、その影響の評価がまだ不十分である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続きこれまでの観測・調査を実施し、さらに多くのデータを取得し、高所の自然環境影響について考察を進める。また、山岳と航空機による同時観測も行い、より高精度な物質動態を理解する。植生への影響については、これまでの観測調査を実施するだけでなく、試料の同位体分析などを行い、植生が関与する物質動態の理解や環境ストレスの評価を行う。
|
Research Products
(5 results)