2011 Fiscal Year Annual Research Report
アジア通貨危機の政治的遺産:政治の不安定をめぐる比較研究
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22310152
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉田 芳史 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 正明 京都大学, 東南アジア研究所, 准教授 (90372549)
滝田 豪 京都産業大学, 法学部, 准教授 (80368406)
河野 元子 政策研究大学院大学, 国際開発戦略研究センター, ポストドクトラルフェロー (80552017)
木村 幹 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (50253290)
河原 祐馬 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (50234109)
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Keywords | 政治不安定 / 経済危機 / アジア |
Research Abstract |
本研究の目的は、韓国、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアを主たる対象として、これら5カ国の政治が1997年のアジア通貨危機以後が不安定になった理由を、通貨・経済危機と関連づけて考察することにある。本年度は前年度に特定した各国の政治の安定や不安定に関して、理由を解明することに主眼をおいた。 これら5カ国のうち、インドネシアは経済危機直後の深刻な政治危機を乗り切ると、政治が一転して安定した。これは政治が東南アジアでもっとも民主的になったほか、経済が好調なことに負うところが大きい。選挙結果を軽んじて選挙民主主義を否定するような動きが目立つようになっていたタイとフィリピンは、国政選挙を受けて政治が従来よりも格段に安定するようになってきていることが分かった。マレーシアでは、2008年総選挙で苦戦を強いられた与党UMNO(統一マレー国民組織)が、2009年の党首・首相の交代以後、支持の回復を進めつつある。韓国でも、李明博大統領は2013年2月の任期満了まで1年を切ったにもかかわらず、これまでの民選大統領と異なり、レイム・ダック化がさほど深刻にはなってはいない。これは政治の左右分断が進みすぎて、有権者のかなりの部分が大統領を消極的に支持しているからと思われる。全体としてみれば、インドネシアを除く4カ国でも、1997年のアジア経済危機後10年あまりにわたって続いていた不安定が解消されるのかもしれないことが分かった。 比較対照事例として選んだ中国とインドは経済が引き続き好調であり、政治に目立った不安定化は見られない。他方、ロシアについては、プーチン体制の長期化に伴って、不正選挙への批判が高まりつつあるものの、プーチンの大統領復帰によって、政治の安定が高まりそうに思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成22年度には、政治の不安定と安定の特定をおこない、2年目の平成23年度にはそうした不安定や安定の理由をアジア通貨危機に関連づけて考察した。研究対象とする国によって研究の進捗状況に差異があるものの、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、当初から、最終年度の平成24年度には、政治的安定回復の可能性について検討する予定にしていた。図らずも、そうした安定が戻りつつあるので、その理由について考察する。
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Research Products
(4 results)