2010 Fiscal Year Annual Research Report
共生の宗教へむけて――政教分離の諸相とイスラーム的視点をめぐる地域文化研究
Project/Area Number |
22320017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 一夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70209435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古矢 旬 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90091488)
杉田 英明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90179143)
長澤 榮治 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00272493)
網野 徹哉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (60212578)
伊達 聖伸 東北福祉大学, 総合福祉学部, 講師 (90550004)
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Keywords | 宗教間対話 / 政教分離 / イスラーム / 世俗化 / 脱宗教化 / 一神教 / 民主主義 |
Research Abstract |
平成22年度の研究は、フランスにおける政教分離の大家J.Bauberot教授を囲んでの研究会から始まった(4月)。その機会に現地の現状の報告を受けるとともに、脱宗教化(laicite)と世俗化(secularisation)の相違と、両概念を区別する方法論的メリットを確認することができた。それを受けて、各メンバーは担当地域の基層的な宗教文化の分析に着手し、年度末までに今後の研究の基盤となるべき知見を得るにいたっている。 7月には、折しも来日したA.Zambarbieri教授(パドヴァ大学)と、翌年度のより本格的な研究会へむけての打ち合わせを行った。9月には研究代表者をフランスに派遣、資料調査を行うと同時に宗教(とりわけイスラーム)をめぐる状況調査を行った。その間、研究分担者たち、特に長澤と伊達は、前者はチュニジアとの交流セミナール、地中海研究グループ(於・トリエステ大学)、イスラーム地域研究国際研究会などで、後者は国際宗教学会、日仏社会学会などで積極的に研究成果を発表し、多様な研究者との交流に努めた。 本研究の重点はあくまでも現代にあるため、社会の推移を注意深く見守る必要があった。メディア上では、2つの顕著な動きが観察された。1つはフランスにおけるブルカ着用禁止の動きである。2つ目は、チュニジアから始まったアラブ世界の民主化の動きである。後者は画期的な事件であり広範な影響を残すことが予想されるが、本課題としては民主化への動きのなかで世俗化がどのような形で現れるかに注目したい。来年度以降、分担者のなかでイスラーム圏を研究対象とする者は、この点の分析に主力を注ぐことになりそうである。 なお、伊達の労作『ライシテ、道徳、宗教学』(勁草書房)が11月に刊行された。フランスの政教分離に関する重要な著作が世に出たことを特筆しておきたい。
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Research Products
(17 results)