2011 Fiscal Year Annual Research Report
死海文書に基づく旧約聖書の原型探求―「歴史書と預言書」―
Project/Area Number |
22320019
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
守屋 彰夫 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (70239698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 剛平 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (20103715)
佐藤 研 立教大学, 文学部, 教授 (00187238)
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Keywords | 死海文書 / 七十人訳ギリシア語聖書 / 歴史書研究 / 預言者研究 / 申命記史家 / バビロン捕囚 / ペルシア時代史 / 捕囚からの帰還 |
Research Abstract |
当該年度は、研究分担者2名と連携研究者2名が長期に亘る在外研究となったため、全体の研究集会を持つことが物理的に不可能となったため、第1年度末の研究集会(平成23年3月8日、立教大学)で確認した研究者個々人の課題にそれぞれが従事することとなった。研究代表者の守屋彰夫は、ネヴィイーム前半部の「前の預言者」(ヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記)と後半部の「後の預言者」(イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書、十二預言書)でのバビロン捕囚に関する記述の精査を行い、両者の照応関係と乖離・不整合関係に関するやや煩環な本文研究に集中した。また、残存している死海文書の該当箇所との比較研究を行い、第二神殿時代後半の本文伝承過程の研究成果に拠りながら、ネヴィイームの原型探究作業を行った。これと併せて、サマリア五書に関する研究をも継続して行い、モーセ五書とネヴィイームの形成過程との相互関連にも注意を払った。研究分担者の秦剛平は七十人訳ギリシア語聖書の「前の預言者」の本文研究の傍ら、翻訳作業を進め、出版の準備を行っている(歴史書部分の翻訳は既に完了)。ゲッチンゲン版の本文校訂作業が進行する中で、英語圏でも多数の研究者による新たな翻訳が完成したが、その動向に呼応するものである。研究分担者の佐藤研は、七十人訳ギリシア語聖書の新約聖書研究に集中し、パウロの伝道旅行での精神活動の軌跡を1冊に纏めた。連携研究者の山田重郎は、ハイデルベルグ大学での在外研究の傍ら、古代オリエントの歴史資料と旧約聖書の歴史記述との比較など幅広く研究を推し進め、ドイツとイタリアのいくつかの大学で研究発表をこなした。連携研究者の月本昭男、山我哲雄、勝村弘也は歴史書と預言文学の研究を、死海文書研究を視野に個別に研究を進めている。研究者個々人の研究は順調に進んでいると言えるので、最終年度に全員での総合研究の場を設定し、成果を残す準備が整いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9.研究実績の概要で述べたように、在外研究者が続出したため、全体の研究の進捗状況は、相互の連絡に基づいているが、個々の研究者の研究は概ね、所期の目的を達成していると考えられる。最終年度には研究集会を公開で開ける準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる今年度の3月に全体の研究集会を公開で開催し、成果を問う予定でいる。海外からの研究者(Professor Hugh G.M.Williamson,University of Oxford)の招聘が実現した場合には、彼も参加した研究集会になり、死海文書研究、預言書研究、第二神殿時代史研究のどの分野でも現在の国際的レヴェルでの研究発表が求められるので、その方向への準備をすることになっている。また、この成果も前回の基盤研究同様、日英両語での出版を予定している。前回の基盤研究成果としての英語版は、13研究発表(平成23年度の研究成果)の図書の項目の冒頭に記載してある。このBrill Academic Pressからの英語版は、日本も死海文書研究の1つの拠点として名乗りを挙げたものとして高い評価を得ている。その日本語版は前年度の成果の中に掲載した(秦剛平、守屋彰夫編著『古代世界におけるモーセ五書の伝承』、京都大学学術出版会、2011年2月刊)。
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Research Products
(18 results)