2011 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ローマにおける外国人芸術家の活動と交流に関する包括的研究
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22320033
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (60260006)
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Keywords | 西洋美術史 / 近代史 / 芸術家の交流 / 風景画 / データベース / 19世紀 / ローマ / イタリア:ドイツ:フランス:デンマーク:イギリス |
Research Abstract |
本年度は、研究担当者全員参加による、ローマおよびカステッリ・ロマーニの風景実地調査を行った。まず、ローマでは、英独仏、各国の在ローマ美術史研究所を訪ね、現地研究員からの聞取り調査および資料収集を行った。フランス美術アカデミーとなっているヴィラ・メディチとドイツの美術史研究所であるバルトルディ邸は、19世紀当時の芸術家たちの宿泊施設および制作の場でもあったため、両施設の各部屋から望むローマ市街のパノラマ風景を実際に調査し、そこで制作されたと思われる風景画との比較を行った。ブリティッシュ・スクールでは、ローマの風景画に関する重要な文献を多数収集し、ゲーテ博物館では昨年購入されたばかりの、当時の画家たちによるパノラマ風景素描を調査した。 ローマ近郊のカステッリ・ロマーニでは、バスを2日間チャーターし、当時の画家たちがスケッチした場所を丹念に回ることができた。ネミ湖、アリッチャ、フラスカーティなど、画題となった地点を集中的に巡ったが、とりわけ、ドイツ人たちがスケッチ旅行で拠点としたオレヴァノのカーザ・バルディ中庭からの眺めが、実際のスケッチポイントであったことを確認できたのは大きな成果と言える。また、ヴィラ・セルペンタラからの山の眺めも、多くの画家によって描かれたものであることが明らかとなった。眺望だけでなく、森の中で風景画に表されている木々や光の表現、また空気感を体感することができたのも今後の研究に役立つ重要な経験である。さらに、チヴォリの滝とヴェスタ神殿は、18世紀のピラネージ以降、画題として取り上げられることが多い重要なスケッチポイントであるが、今回の訪問では遠方からの眺めだけでなく、実際に滝に近づいての調査も行えた。これら実地での体験全てが、今後の研究だけでなく、画像データベースの精度を高める際にも、極めて重要な判断材料となることは間違いない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
データベースの入力作業が順調であり、入力件数に関しては予定以上の作品数がすでに入力済みである。また、本研究課題に興味をもった出版社(竹林舎)から、研究成果を書籍として出版したいとの提案があり、現在、2013年3月末の入稿に向けて、担当者全員が研究を進めているところである。書籍は、研究担当者以外の執筆者も加えた10点ほどの論文を集め、「19世紀の西洋美術と都市」(仮題)シリーズの最初の巻として出版を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
3月末の入稿を目指して、各担当者が論文をまとめる予定である。その際、各人のデータベースの横断検索を実行することで、これまで見落とされてきた、外国人同士の交流が明らかにされるだろう。データベースの制作は各人が別個に行なっているため、現時点で用語の統一がなされていない。欧文のデータで検索する場合も、英独仏伊の各国語で入力されているため、しばしば、検索でヒットしない場合が生じている。今後は、横断検索の必要性が高まることから、研究会などで用語の統一について検討し、特に地名と人名についての統一を図りたい。
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Research Products
(12 results)