2012 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄の服飾および染織技術の非破壊的分析のデータ構築
Project/Area Number |
22320038
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
片岡 淳 琉球大学, 教育学部, 教授 (30204415)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 染織技術 / 刺繍 / 染料分析 / 放射性炭素測定 / 大袖衣 / 琉球文化圏 / うれぐし / 再現 |
Research Abstract |
平成24年度は、沖縄(琉球文化圏)に伝存する染織品のうち、刺繍技法の新資料「久米島刺繍大袖衣」を加えた伊平屋・沖江良部島森家・沖縄本島本部町嘉津宇仲村家・久米島屋慶名家資料を中心に調査をまとめた。名古屋大学年代測定総合研究センター長中村俊夫氏には14C年代測定を行っていただいた。その結果、測定可能な仲村家大袖衣と御巾(ミサジ)、森家、名嘉家紅大袖衣について、いずれもほぼ15世紀半ば頃に遡る年代を示した。『女官御双紙』(伊平屋の阿母嘉那志)「自分双紙」の項に記述された史実の尚圓王時代と一致する結果となった。仲村家の大袖衣刺繍の再現を行った寺田氏は昨年度に引き続き制作を行い、完成した。これらの成果は、12/24に沖縄県立博物館・美術館で開催した「沖縄の服飾および染織技術」において、「沖縄の古衣装の放射性炭素年代」中村、「北山・今帰仁時代かの服飾品」植木、「織物みさじの再現について」祝嶺、「刺繍大袖衣の刺繍再現」寺田各先生が、「中世沖縄の染織技術」片岡が発表し、市民に広く公開し、シンポジウムを行った。寺田氏は琉球独自の千鳥縫いを提唱した。奄美大島に残る染織品を調査し、大和村に伝世する刺繍胴衣の調査を行ったが、「うれぐし」という高機に先行する簡単な腰機を発見でき、さらに帯を数品確認することができた。これまでに所蔵先から提供された織物や染め物の断片は琉球大学機器分析支援センターの客員教授直木氏、池原・儀間両技術専門職員、向井技術補佐員等の指導と研究方法の検討をかさねてデータを構築している。また、沖縄の赤色系・含藍染料の科学的分析も同時に行って頂いている。 その他、紅型の資料分析とデータの構築も引き続き、研究代表者の片岡が行っている。これらの成果は平成23年4月刊の報告書や平成22年5月に浦添市美術館開催「沖縄庶民の装い」展と合わせて次年度25年度にこれまで得た調査報告書を作成したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
染織品の化学的分析は、年代に因る退色、染色された生地の色や処理状態、染料色素の特定など 基礎的な多くのデータをまず構築しなければならなかった。染料と染色された生地との染料の違いなど顔料化された状態の変化など検討する点が当初予定したよりも、資料と時代の経過による資料が多く必要であることがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究機関に共通するデータの書式を構築する必要があるかどうか、資料の撮影データをどの程度の倍率にしたら今後の研究に役立つのか等検討して、まとめたい。沖縄の染織品調査において、所蔵先にまだ整理カードである台帳もなく、併せて製作する必要が出てきた。劣化の進む染織品は出来るだけ早く整理を行い、記録簿を作りたい。と同時にデータをより多く集めて、広く一般市民に沖縄の染織品の次の世代に伝えたい。現在は一個人の努力で大切に保存をされているが、公的支援を是非してくれるように早急にまとめたい。また、より多くの研究協力者と合理的な研究を続けたい。
|
Research Products
(1 results)