2012 Fiscal Year Annual Research Report
「文化現象としての源平盛衰記」研究―文芸・絵画・言語・歴史を総合して―
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22320051
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
松尾 葦江 國學院大學, 文学部, 教授 (70157254)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 源平盛衰記 / 絵巻・奈良絵本 / 中世芸能 / 中世語彙 / 諸本論 |
Research Abstract |
24年度は絵画資料、源平盛衰記周辺の平家物語本文などの資料調査を行い、データを収集した。殊に長門切の調査は8月の長門切シンポジウムの発表を充実させる結果となり、またこれまで蓄積してきた絵画資料の調査結果は、徐々に分析、比較対照の作業へと発展しつつある。絵画資料では、これまで調査対象としてきた絵巻・絵本・屏風のほかに小扇面絵平家物語の中に源平盛衰記の影響を受けたものがあることが分かり、調査の対象が広がった。絵画でいうと屏風絵、文芸では芸能の世界においては、平家物語と源平盛衰記とは一体化している場合が少なくなく、両者を包括して「源平合戦の物語」としてとらえる必要があることが分かってきたので、調査の対象を源平盛衰記に限定せず進めていくこととした。 8月に開催した長門切に関する公開シンポジウム「1300年代の平家物語」はこれまでにない企画だった。古筆研究者が多く来場し、新しい科学的方法の説明を聞いて疑問点を質すことができた。今後、本文研究や平家物語の成立論とどう関わっていくかが課題となる。 歴史学部会主宰の講演会では、改めて武士政権とはどういうものだったのか、治承寿永の内乱後の社会と文化の変化はどのようなものだったかという基本的な問題について問題提起がなされた。 このほか、研究発表会及びシンポジウムを通して、『太平記』や近世芸能など他ジャンルの文芸との比較対照に糸口をつけることができた。このテーマは今後さらに幅が広がっていくことになると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の中、年表作成は順調に進行し、全巻の礎稿が完成した。公刊に向けて出版社を決め、編集方針を検討している。IIの芸能との関係、IVの歴史的背景については公開シンポジウムや講演会を開催、知見を共有した。IIIの絵画資料については調査結果の解析作業を分担しながら進めている。海外での調査は行われなかったが、連携研究員から、他の科研費によって調査されたデータの一部を提供して貰うことができ、それらを活かして国内の資料との比較考察を発展させつつある。Vの索引作成は、担当者の校務の都合でやや遅れてはいるが、語彙の抽出などの作業を少しずつ行っている。Iの本文研究では、従来行われたことのなかった長門切の公開シンポジウムを開催、炭素判定法の説明や新出資料についての報告をふまえて古筆研究家たちと意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調査や討議の結果をまとめ、公開方法を検討する。そのため成果報告会を兼ねて研究発表会やシンポジウムを年内に2~3回開催する。未調査の絵画資料については、対象を絞って調査を行い、それらも含め文学側からの絵画資料研究の方法論を模索しつつ、成果を発表したい。源平盛衰記年表は編集方針がほぼ固まってきたので、原稿を整理し、できれば今年度中に公刊をめざす。索引は底本とする本文の翻刻・公刊(版元は三弥井書店)が完結していないため、準備作業としてまず本文のデータ入力を行って、索引化する上での問題点を洗い出すことにする。
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Research Products
(7 results)