2011 Fiscal Year Annual Research Report
マザリナード文書の電子化:次世代型コーパスの構築と新しい研究環境に関する総合研究
Project/Area Number |
22320066
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸岡 高弘 南山大学, 外国語学部, 教授 (50199923)
DAVID Courron 南山大学, 外国語学部, 准教授 (20308927)
松村 剛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (00229535)
PERRONCEL Morvan 中京大学, 国際教養学部, 准教授 (90339630)
一丸 禎子 学習院大学, 外国語教育センター, 講師 (80567313)
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Keywords | マザリナード / Mazarinades / オンラインデータベース / 政治史 / 17世紀フランス文学 / 仏語 / 仏文学 / コーパス |
Research Abstract |
本研究の主眼であるマザリナード文書の電子コーパスは平成23年3月に基礎的な検索機能を備えて一般公開されたが、本年度は次の3点でさらに精度と機能を向上させた:テクスト・データ転写ミス修正、文献情報の追加、検索機能の強化(特に実質的国際基準であるMoreauの整理番号による検索が可能になったことは重要である)。これらの作業は後で述べるこの電子コーパスを中心に形成されつつある研究者コミュニティの学際的交流からもたらされる専門知識によって一層完成度を高めることができた。 特に本年度は世界で初めてマザリナード文書の電子コーパスを構築、実用の段階に至ったという研究史上に残る重要な業績を残したが、それが日本で成し遂げられたこと、しかも東日本大震災という未曾有の災害に見舞われながらも、日本政府の学術支援と大学の臨機応変な協力によって研究計画が維持・継続されたことに海外の研究者(特にフランス)から瞠目と深い敬意が示されたことは特筆しておく。 電子コーパスの公開により新しい研究者コミュニティーの創成は次の段階に入った。特にマザリーヌ図書館との協力体制を強化し、フランス国立図書館からの協力承諾も得ることができた。加えてグルノーブル、エクサンプロヴァンス、トロワ、ルーアン図書館のコレクションを調査し、大学研究者と協力し新しい研究環境における共同作業のあり方、教育現場への還元方法等について具体的な計画を提案した。 学術研究の教育への還元としては、具体的に次の2つの成果を挙げておく。海外ではフランス・パリ大学の招聘により、この電子コーパスを使った博士課程・模擬研究セミナーを行い、インターネット上でライヴ配信(現在は録画公開)された。これは本研究を国際的に紹介することにも役だった。国内では、明治学院大学フランス文学科の「古典期フランス文学」の授業において、日本語で一般の人にも理解されるように本研究サイトの解説の一部が翻訳された。 以上のように研究者のみならず教育現場にも還元することが可能になり、本研究は次世代型コーパスの構築と同時に、着実に新しい研究環境を組織・展開する国際的な学術実験として成長した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の電子コーパスを「一部研究者に公開する」という課題は「全体を一般に公開し、登録された研究者が編集作業に携われる」段階まで大きく進展した。また新しい研究環境の中心となる研究者コミュニティは電子コーパスが当初想定した以上の完成度によって公開されることになったため、研究者やフランスの図書館の積極的な協力が得られ、同時に教育現場への還元も可能になるまでに進展した。以上の点から鑑みて、本研究の「世界に先駆けて創造的研究活動のモデルを日本から発信し、日本がリーダーとなりうる研究領域を開拓する」目的は当初の計画以上に達成されつつあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に研究計画が進行しているので、計画通りに進めたいが、二つの問題がある。いずれも東日本大震災に由来するものだ。一つは予測される東京直下型地震と放射能汚染等の懸念により、海外の研究者が安全の担保に不安を持っていることだ。こうした状況で24年度に予定されている国際シンポジウムを開催するには困難が予想される。この問題についてはしかし、本年度のマザリナード図書館との協議により、形を変えてフランスで行うことも可能である。もう一つは、日本政府からの補助金が本年度のように遅れることが予想される。その場合、海外の業者への支払い期限が守れない可能性がある。本研究課題の契約不履行による日本国への信用不安という望ましくない結果に発展させないためには、本年度同様、南山大学の寛容な対応と学習院大学事務方の臨機応変な機動力に期待する以外に解決の道はないと考える。
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Research Products
(6 results)