2011 Fiscal Year Annual Research Report
漢字字体変容の原理―敦煌文献から現代日本戸籍漢字まで―
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22320087
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
高田 智和 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・構造研究系, 准教授 (90415612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 晴通 北海道大学, 大学院・文学研究科, 名誉教授 (10002289)
小野 芳彦 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20126022)
豊島 正之 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10180192)
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Keywords | 漢字字体 / 字体規範 / 字体編年 / 漢字字体規範データベース / 敦煌文献 / 日本語活字 |
Research Abstract |
本研究は、(1)既存の漢字データベース群の連携と、資料整備が手薄な時代・地域について漢字字体資料の増補によって、歴史的変遷・共時的異化の二面からなる資料体を作成し、(2)この資料体に基づいて、漢字字体の基礎理論・基本用語を明確化・国際化した上で、字体編年規準を透明化し、(3)漢字字体の規範とその変容の原理について、客観的かつ国際的に通用し得る記述を与えることを目的とする。 平成23年度は以下の研究活動を行った。(1)「漢字字体規範データベース」に収録されている(今後の収録を検討しているものも含む)パリ国立図書館蔵のペリオ・コレクション(P2548論語、P3278金剛般若経など)、京都国立博物館蔵の日本古写本(浄名玄論巻第四、五月一日経続高僧伝巻第二十八など)について、字体編年確認のための原本調査を行った。(2)それぞれの原本調査にあたっては、書誌学、文献学、日本語学、材料工学の専門家を交え、原本を前にして、字体編年に関わる要素の抽出と類型化のための基礎的な検討を行った。また、(3)漢字字体規範史において重要視されている唐代石刻「開成石経」の原碑(西安碑林博物館蔵)と原拓(京都大学人文科学研究所蔵)の調査も行った。(4)現代中国及び日本の漢字の共時的異化を収録した「異体漢字対応テーブル」を作成し、人間文化研究機構の研究資源共有化統合検索システムに提供した。(5)以上の知見を国内外の学会で公表するとともに、日本語学会2011年度春季大会においてワークショップ「文字研究における画像データベースの利活用」、2011 International Conference on Japanese: Language Educationにおいてワークショップ「異文化コミュニケーションとしての漢字・漢語・漢文」、漢字字体史研究国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」を企画・実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度末までに「漢字字体規範データベース」は、隋写本、唐版本、宋写本など12典籍を増補・公開し、平成23年度には日本の古活字資料等の公開準備を進め、資料体の構築は順調に進んでいる。また、日本語学会2011年度春季大会ワークショップ「文字研究における画像データベースの利活用」、2011 International Conference on Japanese: Language Educationワークショップ「異文化コミュニケーションとしての漢字・漢語・漢文」、漢字字体史研究国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」を通して、漢字字体に関する基礎概念・理論的枠組みに関する議論を深めている。
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Strategy for Future Research Activity |
「漢字字体規範データベース」の増補と「異体漢字対応テーブル」の拡充を行い、資料体の整備を継続する。また、原本調査を行った典籍については、字体編年の記述に必要な書誌情報を追加していく。さらに、本年度以降は、字体基礎理論の国際化について、本格的に取り組むことを目標とする。
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Research Products
(10 results)