2010 Fiscal Year Annual Research Report
副葬品の構造・材質・色彩からみた古墳葬送空間の再現的研究
Project/Area Number |
22320156
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松木 武彦 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (50238995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今津 節生 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 環境保全室, 室長 (50250379)
鳥越 俊行 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 環境保全室, 研究員 (80416560)
岡林 孝作 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館, 総括研究員 (80250380)
桃崎 祐輔 福岡大学, 人文学部, 教授 (60323218)
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Keywords | 古墳時代 / 竪穴式石室 / X線CT壁 / 馬具 / 鏡 / 短甲 / 文化財修復 / 勝負砂古墳 |
Research Abstract |
5世紀を中心とした古墳時代の葬送空間の再現を行うために、平成18年度に未盗掘の状態で発見され、最新の保存技術とデジタル情報を駆使して取得および記録がなされた岡山県倉敷市勝負砂古墳の竪穴式石室および副葬品のデータを一つの基準資料として、鏡・馬具・短甲・武器(矛・刀)とその付着有機質の素材と構成についての分析に着手した。 この研究によって、これまで不明であった古墳時代中期の繊維技術と、金属製品に対するその使用法などが明らかになると同時に、それらの器物が並ぶ石室内の副葬空間の様相も復元され、古墳副葬儀礼の研究にも大きく寄与する端緒となる。これまでに奈良県藤ノ木古墳で6世紀の副葬空間の復元はなされているが、それを約100年も遡る事例として勝負砂古墳を中心とした本研究の成果は貴重なものとなる。本年度は、5月に短甲の保存処理を完了し、付着有機質の分析を開始した結果、それが平絹を中心としたもので着用および梱包に使用された可能性が明確となった。また短甲の金属部分の調査と記録を9月から3月にかけて進め、その型式額的位置づけを明らかにした。馬具については、9月に九州国立博物館で2008年に引続いて2回目のX線CT分析を行い、いくつかの繊維製品の構造が明らかになって、有機質の部材を付けた状熊の馬具の可視的復元に具体的な道筋がつくに至った。その中で、昨年度に採取されて分析が進められていたイネ科植物の遺体については、新たな型式学的および民俗学的検討に進展によって、馬具の鞍の付属品である可能性が指摘されて議論を深化させた。これらによって、CT分析で得られる馬具復元のための材料はほぼ出揃ったことになり、2011年度に進める予定の分解調査の準備が完了した。また、鏡のX線CT分析と型式学的検討からそれが多少特殊な図文をもつ可能性が明らかになった。勝負砂の資料が今後比較資料を集めるための基準になるが、当該年度の作業によってその基準たる詳細が具体的に判明し、比較検討の資料的ペースが形成された。
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