2011 Fiscal Year Annual Research Report
副葬品の構造・材質・色彩からみた古墳葬送空間の再現的研究
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22320156
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松木 武彦 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (50238995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今津 節生 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 環境保全室, 室長 (50250379)
鳥越 俊行 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 環境保全室, 研究員 (80416560)
岡林 孝作 奈良県立橿原考古学研究所, 附属博物館, 総括学芸員 (80250380)
桃崎 祐輔 福岡大学, 人文学部, 教授 (60323218)
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Keywords | 古墳 / 竪穴式石室 / 馬具 / X線CT / 勝負砂古墳 / 短甲 / 文化財修復 / 鏡 |
Research Abstract |
古墳副葬品のうち構造・材質・色彩について、分析とデータ化が可能な実資料約180点(武具約80点・馬具約80点、鏡約120点)の形状、および有機質の付属物または付着物についての基礎資料の集成作業を進めた。武具については、韓国に赴いて調査した朝鮮半島出土資料も比較対象に含め、本体金属部分については約200点の実測図と写真の集成が完了し、有機質の付属物または付着物については50点の基礎資料を集めた。馬具については、基準資料となる岡山県勝負砂古墳出土品との関連資料を中心に、韓国の馬具研究者を招聘して助言を仰ぎつつ80点以上の実測図および写真の集成が完了し、有機質の付属物または付着物についても記録を整理した。 基準資料となる勝負砂古墳出土馬具については、8月以降、2010年度に採取したX線CTスキャナの撮影データを参照しつつ各部材に分解し、それらの肉眼実測・記録を11月に終了した後、再びX線CTスキャナにより有機質を含む部材ごとの詳細な撮影を行った。この過程で組紐状の有機質の構造が明らかになった。上記の作業をもとに、専門機関において修復を行いながらさらなる実測・写真撮影・資料採取などの作業を進めた。 この作業と併行して、昨年度に観察と資料採取が終了した岡山県勝負砂古墳の短甲と鏡の付着布片について、宮内庁書陵部の吉松茂信氏の協力を得て実体顕微鏡による鑑定と分析を引き続いて行い、以後の鑑定と分析の際の比較対象として使用可能な基準資料作りを行った。 上記の作業を円滑に行うために、1月および2月の2回にわたって研究打ち合わせを行い、情報交換ならびに爾後の作業計画の策定を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古墳副葬品及び有機質のデータ集成のうち、鏡が遅延している。その代わりに、勝負砂古墳出土馬具のX線CT撮影が、当初本年度には予定していなかった詳細部分においても進み、有機質の構造についても予測外の新たな知見を得て記録に成功した。これらのことを勘案し、おおむね順調に進展していると判断されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
有機質の実態が、勝負砂古墳出土馬具という基準資料の精査によって予想以上に明らかになった結果、それらの諸特徴を広範に正しく分析・記録するためには考古学に基づく分析を中心とするのみでは不足する可能性がある。対応策として、繊維、染料、漆、植物遺体など、考古学以外のさまざまな分析科学の専門家に広く研究補助(鑑定・分析など)を依頼する予定である。
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