2010 Fiscal Year Annual Research Report
ブルガリア・デャドヴォ遺跡の資料分析を通して見る青銅器時代開始期の背景
Project/Area Number |
22320163
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
禿 仁志 東海大学, 文学部, 教授 (10186009)
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Keywords | 青銅器時代 / 銅石器時代 / 年代 / ブルガリア / トラキア / 集落 / 環濠 / 地中探査 |
Research Abstract |
本研究の最終目的はブルガリアおよび周辺諸国で青銅器時代の開始にあたってしばしば言及される「民族移動論」(印欧語族侵入仮説)の当否を、トラキア平野中の1遺跡テル・デャドヴォの発掘資料を使って検討することである。全3カ年計画のうち初年度である本年度は1)集落構造の分析、特に溝(環濠)遺構の復元、2)ヒトとモノの動きを「土器胎土分析」を通して具体的に行う、3)遺跡堆積層序の再検討と詳細な年代研究の実施、を目的に8月下旬より約1ヶ月間ブルガリア・デャドヴォ遺跡調査基地に滞在し、現地調査を行った。1)に関しては研究協力者である渡辺広勝氏による詳細な地中レーダー探査が実施され、その成果はブルガリア側に提供された。それをもとに来年度以降に「環濠」の発掘調査を実施するとの調査協定書をブルガリア側と作成した。2)に関しては遺跡周辺で粘土層の採掘を行い、その試料を使って土器焼成実験を開始した。また遺跡周辺の地質環境調査も実施した。これらの成果は日本・ブルガリア共同研究としてブルガリア・ネセバルで2011年9月25-29日開催予定の「第17回ガラス・窯業国際会議」の席上発表されることとなった。3)に関しては遺跡堆積層ごとに採取された炭化物のうち20点を集中的に年代測定し、銅石器時代と青銅器時代に関してすこぶる興味深い結果を得ることができた。すなわちデャドヴォ遺跡の後期銅石器時代は4500-4300 cal BC,前期青銅器時代初頭に対しては3350-3100 cal BCという年代値が与えられ、本遺跡でも両時代の間に約1000年もの空白期(居住断絶期)の存在が明らかとなった。この間にトラキアあるいはバルカンで何があったか、まさに本研究の出発点ともなる問題認識に対して年代的枠組みが設定されたわけであり、この年代値を速報した調査報告書(次ページ参照)はブルガリア側でも、大いに関心を呼んでいる。
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