2012 Fiscal Year Annual Research Report
雇用関係の「契約化」と労使関係法制の歴史的展開に関する法理論的・比較法的研究
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22330022
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
有田 謙司 西南学院大学, 法学部, 教授 (50232062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 陽二 大東文化大学, 法学部, 教授 (10199432)
唐津 博 南山大学, 法務研究科, 教授 (40204656)
石橋 洋 熊本大学, その他の研究科, 教授 (70176220)
石田 眞 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80114370)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 雇用契約 / 労働者 / 労働組合法 / 団体交渉 / 労働組合法史 / イギリス労働法学 |
Research Abstract |
平成24年度には、まず、イギリスの雇用契約概念の形成史を理論的に分析した研究成果を、研究分担者の石田眞が論文にまとめ、雇用契約概念は、福祉国家、団体交渉、企業組織といった制度的な変化と対応して人為的にかつ歴史的に構築されたことが明らかにされた。 次に、イギリスの研究者からの示唆を得て、本科研費にかかる研究を推進するため、イギリスから研究者を招聘し、11月9日・10日には「労働組合法の歴史的展開-イギリスと日本」をテーマに、2月16日・17日には「労働法の歴史的展開と労働法理論-イギリスと日本」をテーマに、ミニシンポジウムを開催した。11月のミニシンポジウムではK.D.Ewing教授(キングスカレッジ)を招聘し、“The Rise and fall of Collective Bargaining in Britain, 1912-2012: The Role of the State and the Role of Law”と題する報告をしていただき(報告原稿を研究分担者古川陽二と研究代表者有田謙司で翻訳し公刊した)、イギリスの労働組合法史を団体交渉の側面から分析する作業が大きく前進した。また、研究代表者は、“Legal Concept of “Worker” under Trade Union Law in Britain and Japan”と題する報告を論文として公刊し、労働組合法上の労働者概念の形成史の日英比較研究を進めた。2月のミニシンポジウムでは、R.Dukes博士(グラスゴウ大学)に、“Collective Laissez-Faire was Planned: British Labour Law 1890s-1950s”と題する報告をしていただき、イギリス労働法学における労働組合法制史の分析に関する議論状況を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、イギリスの研究者を招聘して2回のミニシンポジウムを開催し、本科研費にかかる研究の研究代表者及び研究分担者も報告を行い、日英での比較研究が大きく前進するところとなった。とりわけ、イギリスにおける団体交渉の変化を労働組合法制史との連関で分析することができたこと、および、イギリス労働法学におけるその位置づけをめぐる議論状況をしっかりと把握できたことは、最終年度の来年度の研究のまとめへ向けて、大きな前進であり、成果といえる。 日本の労働組合法制史を労働組合の組織形態の変化、団体交渉の制度化との連関で分析する作業についても、比較研究としてのイギリスの分析作業が上記のように進み、それとの比較という分析視角が定まったことで、最終年度の来年度のまとめの研究において十分に展開できることが可能となった。 また、平成24年度に招聘したK.D.Ewing教授との研究交流から、来年度には9月中旬にイギリスのロンドンでイギリスの研究者を5,6名とともに研究会を開催することが決まっており、これが、本科研費にかかる研究をまとめるうえで、大きな推進力となるものと期待できる。研究代表者、研究分担者および連携研究者の4,5名が、イギリスに行き、研究成果をイギリスの研究者のまえで報告し、議論することで、本科研費にかかる研究のまとめの作業を進めることができるものと考える。本科研費にかかる研究をまとめるうえで重要と思われるテーマに関わるような報告テーマで日英の報告者が研究報告を行うように、K.D.Ewing教授と双方の参加メンバーへの依頼をするべく調整をしているところであり、大きな成果が期待できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に招聘したK.D.Ewing教授との研究交流から、平成25年度には9月中旬にイギリスのロンドンでイギリスの研究者を5,6名とともに研究会を開催することが決まっており、ここでの報告と議論の成果を踏まえて、今年度は研究のまとめの作業を行うこととする。本科研費にかかる研究をまとめるうえで重要と思われるテーマに関わるような報告テーマで日英の報告者が研究報告を行うように、K.D.Ewing教授と双方の参加メンバーへの依頼をするべく調整をしている。 また、日本については、労働関係法令立法資料研究会がまとめて公刊した『労働関係法令の立法資料研究(労働組合法関係)』(2015年4月・公益財団法人労働問題リサーチセンター)などの研究成果も踏まえ、戦前の労働組合法案を労働組合運動史との連関で分析することも行い、雇用労働関係の契約的把握の影響について、これまでに分析してきたイギリスの雇用契約の形成史と労働組合法制史との連関に関する知見とを比較しながら、分析を行うこととする。 以上のような進め方で、労働法制における労働者集団の関与のあり方について、「雇用(労働)契約」規制という観点から、日本とイギリスの歴史的・比較法的分析によって、労働契約法制の今後の展開にとって必要不可欠と考えられる従業員代表制の法制化のために検討すべき課題である、労働組合との団体交渉システムと従業員代表との協議システムとの間での相互補完的関係の整序を行うという、本科研費にかかる研究の目的の達成へ向けて研究をしていくこととする。
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