2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22330066
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
姫野 順一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 研究員 (00117227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深貝 保則 横浜国立大学, 国際社会科学府・研究院, 教授 (00165242)
新村 聡 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (00167561)
江里口 拓 西南学院大学, 経済学部, 教授 (60284478)
江頭 進 小樽商科大学, 商学部, 教授 (80292077)
黒木 亮 獨協大学, 経済学部, 准教授 (90364728)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 新自由主義 / 歴史的多様性 / 経済構想 / 社会哲学 / ネオリベラリズム / 社会正義 / 社会民主主義 / 社会改革 |
Research Abstract |
本年度は新自由主義の社会哲学のおよび各国比較に重点を置き、各分担者の新自由主義研究における分担部分の研究を進めるとともに、2014年3月に長崎および横浜で昨年度に引き続きイスラエルおよびカナダから新自由主義研究に携わる研究者を招聘して国際ワークショップを開催した。 長崎ワークショップでは姫野により4年間実施してきた当該研究の中間成果が総括され、新自由主義研究における社会哲学・経済構想・歴史的型の析出が各国比較で解明されることの重要さが強調された。引き続き、ハイファ大学のガル・ジェルソンによる「新自由主義と啓蒙の伝統」およびクイーン大学のサンデル・オッターの「20世紀初期におけるイギリス帝国世界の新自由主義:共同体・習慣・法」の問題提起を受けて、日本側からゲストスピーカーとして寺野範野が「ホブハウスの倫理理論」について応答した。このワークショップを通じて経済の変容に対応する法・倫理・文化の相対的な意義が歴史的な文脈で浮かび上がった。 横浜ワークショップでは深貝を中心に、J.S.ミルの自由論における「自由と権威をめぐる格闘」・「社会契約」・「陶冶の領域」の三層構造と『自由論』の日本への導入、伝統社会=有機、近代社会=原子、過渡期=進化、現代=権威vs自由といった社会形態のメタファー(福祉の基礎の動態)、それに照応する社会統合および心理‐文化的感情、社会契約にからむ慣習・法の社会的文脈の変遷といった方法的なアプローチの問題が提示され、ジェルソンの「自由市場、福祉、自然と主権」およびオッターの「19世紀後期のイギリス自由主義および理想主義政治思想における福祉と幸福」が報告された。これらにより新自由主義における「福祉」の意義と、その社会統合機能の歴史的文脈が浮き彫りにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災による影響を受けて外国人研究者の招聘に遅れが生じていたが、この間遅れを取り戻してきている。科研の後半、研究分担者の退職などでメンバーの入れ替わりがあり、また招聘予定者も当初の計画からの変更があったが、予定のテーマに関する外国人研究者の招聘を実施し、ほぼ順当に当該テーマに関わる国際共同研究を進めてきている。 本年は研究協力者であり、本科研の開始当初日本に招聘して新自由主義研究の問題を相互に確認したオックスフォード大学の政治思想研究者マイケルフリーデン名誉教授に依頼して、新自由主義の最新の研究に関わる研究者を招聘できた。 具体的には、イスラエルおよびカナダの新自由主義研究者を招聘し、ハイファ大学のガル・ジェルソンからは新自由主義の社会哲学と啓蒙思想との関連、およびそれは対象とする問題群について、またクイーン大学のサンデル・オッターからは「20世紀初頭の『イギリス帝国』における共同体・慣習・法」の問題提起を受け、日本側からの報告・コメントを交えて新自由主義の社会哲学およびその歴史的な展開に関する研究を深めた。 また研究方法に関して、ミル自由論における「自由と権威、社会契約、陶冶領域」の三層構造に立脚することの重要性が深貝により提起され、自由主義の要素を三層で分解し、それぞれのファクターとその関連が、伝統・近代・現代のそれぞれの社会の基盤的な推移のなかでどのように変容するか、その各段階における社会統合の心理-文化的な感情がどのように推移するのか、社会的文脈における習慣および法の思想はどのように変容するのかといった「新」自由主義の歴史的な構造認識を共有した。 以上のように本科研は概ね順調に進み、国際的な新自由主義研究にキャッチアップして海外の研究を受容し、日本の新自由主義との比較研究も視野に入って来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研の最終的な年の取りまとめとして、研究分担者、研究協力者の日本人による総括研究会を開催する。これは「イギリス新自由主義と社会主義」(姫野・深貝・関・江里口・新村)と、「ドイツ・オーストリアの新自由主義」(江頭)、アメリカ新自由主義(高・黒木)、日本の新自由主義(深貝・姫野)、新自由主義と全体主義(深貝)という分担で遂行される。特にこれまで本科研のチームのなかで研究蓄積が手薄であった日本の新自由主義については力を入れる。 またこれまで蓄積してきた新自由主義研究の政治思想的な課題の抽出を補足するために、国際学会で日本を訪問する予定のLSEの政府研究学科長のポール・ケリーを招聘する。さらに途上国の新自由主義の型の研究を補うために、イタリア・ピサ大学経済学部のマルコ・ギディを、同じく途上国型の新自由主義のケーススタディの研究としてノルウェーの国際時事研究所のトロン・ギオルブを招聘する。 次年度は科研の最終年のなるため、これまで招聘してきた内外の研究協力者(マイケル・フリーデン:オックスフォード大学、コリン・タイラー:ハル大学、アニー・コット:ソルボンヌ大学、高哲男:九州産業大学、デヴィッド・バウチャー:カーディフ大学、アンドリュー・ヴィンセント:カーディフ大学、ロス・エメット:ミシガン大学、デヴィッド・シープレイ:デンバー大学)等の協力を得て「新自由主義研究のフロンティア」をテーマとする英文論集の出版準備に取りかかる。また日本人による研究の成果として、若手研究者を含めた研究書『新自由主義の研究』(仮題・日本語)の出版準備に取りかかる。
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Research Products
(15 results)