2011 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済形成期における奉公人の系譜:近世労働力市場の日英村落地域比較研究
Project/Area Number |
22330104
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
高橋 基泰 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20261480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 良之 山形大学, 大学院・教育実践研究科, 教授 (10210072)
山内 太 京都産業大学, 経済学部, 教授 (70271856)
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Keywords | 奉公人 / 日英地域比較 / 近世労働力市場 / 労働組織 / 労働力移動 / 旧上田藩上塩尻 / ケンブリッジ州ウィリンガム教区 |
Research Abstract |
半成23年度はまず、前年度の成果の上に、日英奉公人制度の研究データの入力・分析を進めた。昨年度発見した、上塩尻村(長野県)の東隣接村である秋和の区有文書およびあらたに上田市博物館長林和男氏の尽力により新たに提供された中島家文書の史料整理を行いながら、上塩尻との集落の違いを見だしている。この知見は、上塩尻西隣接村である下塩尻村における史料発掘を必然化させ、上述林館長の仲介を得て、下塩尻山根地区沓掛氏および中島地区母袋氏の所蔵する大量の文書の発見をもたらした。とくに前者では全く手つかずの近代醸造業関係文書があり、そこには杜氏などを含む中遠距離移動および労働力市場についての貴重な史料であることは疑いない。これらの史料群を本年度完成した上塩尻縁組データベースと併せて活用し、女性の労働力導入という観点から系譜関係に沿った近距離労働力移動および労働力市場形成過程を説明する道筋が開けている。英国においては、やはり社会経済データベースが生成済みのウィリンガム教区を含むケンブリッジ州全体の検認遺言書約30000件の史料分析に着手し、また同州の教区登録簿データ集も用いて、地域労働力系譜群データ生成を進めている。また、方法論の確立のために、業績1の論考の公表とともに、基本資料としてM・スパフォド著『コントラスティング・コミュニティーズ』の一部翻訳を前年度に引き続けて行った(『国際比較研究』第8号に収録)。なお、2月に、イギリス・ケンブリッジ大学およびドイツ・ミュンスター大学における国際セミナーにおける議論を通じ、奉公人の居住についての示唆を得たことも次年度の課題を拡大するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は東日本大震災による影響で主要メンバーの多くが東北地方在住ということもあり、概ね5ヶ月ほどの遅れをみたが、その間にもデータの蓄積を進め、旧上田藩の共同墓地調査も含め、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の事例である、上塩尻村の立体家系図データの導入を行うとともに、新たに周辺村落のデータの収集も進める。他方、日本の事例にくらべいささかデータ化の遅れているケンブリッジ州あるいはイーリー司教管区における遺言書データの入力をすすめ、最終的な比較分析につなげる。また、昨年以来調査の進む上塩尻東隣接村秋和村における史料整理および、今回新たに見出された上塩尻西隣接村下塩尻村母袋氏文書の史料の整理に着手する。
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