2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22330228
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 寅彦 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30554456)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教科書 / 英語教育 / 挿絵 / イタリア / ドイツ / フランス / 比較教育学 / 教育学 |
Research Abstract |
本研究はヨーロッパの英語教育において教科書の中の挿絵の役割を探り、またその挿絵から理解される教育政治・文化背景を明らかにしていくものである。平成24年度は研究対象国としてイタリアを選び調査を進めると同時に、前年度および前々年度に調査を行ったドイツとフランスについても比較検討のための補足調査を行った。その成果は以下のようにまとめられる。 1 長らくの間各地方での方言使用が著しかったイタリアにおいては、もとよりイタリア語教育が外国語教育に近い状況があり、しかもそのイタリア語の教育法は古典語であるラテン語の教育法に準じる傾向があった。そのため、英語やフランス語というような外国語教育もその教育法に準じるものとなり、教科書は19世紀のものを20世紀中葉にいたるまで重版して用いるということとなった。ムッソリーニ政権時代も含めて、イラストはその中では英文学歴史資料や名所旧跡を示すもの以上のものとはならなかった。 2 しかし、60年代以降は風紀の自由化と教育の脱宗教化により、まさに英米がその自由のモデルとして視覚的表象をなされるにいたった。それはテキストと無関係にヒッピー文化やポップカルチャーのイラストが収録されるという現象から理解される。 3 第二次世界大戦期における伊・仏・独の三国比較を行うためにベルリン教育図書館と仏国立教育博物館付属図書館で行われた調査からは、当時の教科書検閲をめぐる法規資料や教員組合の資料のような補足資料が多く得られ、当時の教科書のあり方をめぐる背景がよりよく理解されるにいたった。さらに仏国立教育博物館付属図書館においては、アルザス・ロレーヌ地方を中心に用いられていた教育スライド教材の簡潔な調査が行われた。本資料はドイツにおいては悉く破壊された貴重な資料であり、この視覚教材が教科書のイラストと同じ傾向をもっていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究の達成度は「2 おおむね順調に進展している」だが、これはイタリアでの調査が十分に満足いくものであり、さらに平成23年度には積み残しとなったドイツとフランスでの補足調査も大いになされたためである。ただ、平成24年度の研究内容をさらに充実させるためには、引き続きこの三国においての調査が必要であり、平成25年度の研究対象国であるスペインでの調査だけでなく、この三国での補足調査は引き続き行われる必要がある。そのため「おおむね順調に進展している」としたものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、スペインの教育大学に保存されている教科書の調査を行うことで、フランコ政権下ないし第二次世界大戦下における英語教科書を中心に英語教育に表れたイラストを分析することとなる。同時に、平成24年度までの研究で得られた知見との比較分析も行うことで、より高次な理解を得ることも目標とする。そのためにも、平成25年度も引き続きフランス・ドイツ・イタリアにおいて補足調査を行い、ヨーロッパ各国における英語教科書の使用の背景にある教育政策の理解を深める予定である。
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Research Products
(2 results)