2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22330229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲垣 恭子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (40159934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 洋 関西大学, 人間健康学部, 教授 (70067677)
目黒 強 神戸大学, 大学院・発達環境学研究科, 准教授 (70346229)
高山 育子 東海学院大学, 人間関係学部, 講師 (30440572)
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Keywords | 文化人 / 教養 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
本研究は、近代日本における「女性文化人」の社会的形成の経路を明らかにすることによって、女性の教養の社会的地位について新しい角度から位置づけ直すことを目的としている。特に、近代的な知的教養の観点だけではなく、伝統(たしなみ)型の教養がその社会的形成に果たした役割にも光を当てて検討することによって、「女性文化人」の特徴をトータルに描き出すことが本研究の特質である。またこれらの分析によって得られた知見から、従来男性を中心として考えられてきた「教養」の概念に新たな視点を付け加える。 平成23年度は、平成22年度にひきつづいて研究分担者は各領域における代表的人物についてそれぞれ人物研究を進めるとともに、5回の研究会を開催して成果を共有した。報告に基づいて意見交換するなかで、「女性文化人」の社会的軌跡を特徴づける従来の文化人・知識人研究にはない視点として、「女性文化人」の受け手や市場、活動メディア、「女性文化人」としての活躍年齢、留学や稽古事の経験、交友関係、既存の価値観との位置関係といった特性があることを明らかにした。 また、「女性文化人」分析により、1950年以降の日本の知の体系や思想状況から現在の日本の思想・政治状況に至る流れのなかに、「女性」という集団が影響力を持つ様相を描き出すことが可能になるという方向性を見出した。 これらの知見にもとづいて、「文化人」を「知識人」、「有名人」との境界を定義することにより、「文化人」を量的に扱いうる資料を選定・収集し、分析を行なっている。 24年度は同様に作業を続けながら、これらをあわせて戦後日本の「女性文化人」の社会的軌跡を数量的・実証的に描き出し、成果をまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「女性文化人」の社会的形成の経路を明らかにするという本研究課題の目的を達成するために、人物研究を軸に作業を行なってきた。研究会での研究経過の報告とディスカッションを通して、当初の目的にそって「女性文化人」の社会的軌跡を明らかにする複数の特性を実証的に描き出すことができた。同時にまた、研究初年度(22年度)に提示した「女性文化人」を分析俎上に載せる理論枠組みを鍛えつつ、「教養」や「学問」概念の再検討も行なってきた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は、これまでの研究成果にインタビュー調査や量的分析の結果を肉付けすることで、現代社会における女性の教養や学問の意味を明らかにするとともに、近代日本の知の体系や思想状況のなかで「女性文化人」がどのような影響力を持ったのかを、現在の日本の思想・政治状況につながる経緯を明らかにしていく。分担者はこれまでの研究の成果を個別に論文として発表するとともに、共同研究の成果としてまとめていく予定である。
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Research Products
(19 results)