2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22340001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
都築 暢夫 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10253048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 文元 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50294880)
志甫 淳 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (30292204)
山崎 隆雄 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00312794)
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Keywords | 数論幾何 / 数論的D加群 / リジッド解析幾何 / p進コホモロジー / 過収束アイソクリスタル / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
研究代表者の都築は、海外共同研究者のパドバ大学のChiarellotto教授を訪問して国際共同研究を行い、正標数の代数曲線上の半安定族に対して、p進コホモロジーにおけるClemens-Schmid完全列の存在を完成させた。これは、複素多様体におけるClemensやSchmidによるものやDeligneによるl進コホモロジーにおけるもののp進コホモロジー版である。証明におけるひとつの鍵は、対数幾何的な意味で良い超被覆を構成することである。また、リジッド解析的な管状近傍を利用して、局所的対象と大域的な対象の比較を可能にした。 都築は、前年までの研究を発展させて、幾何的単枝多様体上の過収束アイソクリスタルの圏とその整閉包上の過収束アイソクリスタルの圏が圏同値になることを証明した。さらに、そのコホモロジーが一致することも証明した。これは、Grothendieckがエタール層において証明した定理のp進版であり、志甫による過収束アイソクリスタルの降下理論と都築におけるリジッドコホモロジーの降下理論が鍵をなす。 分担者の志甫はアイソクリスタルの過収束性に関して、曲線への制限における判定法を証明した。また、分担者の加藤はリジッド幾何学の基礎付けを行い、特に他の理論との関連性を明らかにする上で、いくつかの進展があった。連携研究者の阿部は、都築による代数曲線上の過収束アイソクリスタルの充満忠実性予想の反例を与え、Frobenius構造を持たない場合の過収束アイソクリスタルの構造に新しい見地を与えた。 2012年度に繰り越し分において、都築はストラスブール大学のMarmora准教授と数論的D加群と超局所解析について、Oxford大学のLauder教授とp進コホモロジーを用いたアルゴリズムに関して討論し、p進コホモロジーに期待される発展方向に対して新しい視点を探る方向性を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
正標数の代数曲線上の半安定族に対して、p進コホモロジーにおけるClemens-Schmid完全列の研究は、対数的な退化の重みの性質として期待されるものであった。正規直交因子の対数幾何的な超被覆とその埋め込みの系の構成や、大域と局所の比較など、技術的に非常に繊細で、今までにない精緻な理論を構成する必要があった。特に、超被覆の理論は、エタール位相に関する正規直交因子を扱っていて、将来的に必要になると期待される。また、この結果はp進消滅サイクルの理論に向けた第一歩である。 幾何的単枝多様体上の過収束アイソクリスタルの圏に関する研究においては、個々の証明においてはp進特有の手法を用いたが、全体の流れはすべての良いコホモロジー理論において成り立つべき方法で行われていて、ある意味幾何的な手法を用いている。これは、数論幾何におけるコホモロジーの一般論は、その理論によらずに平行になっていると言う視点からに寄る。 第一の結果のClemens-Schmid完全列と合わせて、p進コホモロジーとl進コホモロジーやHodge理論の類似性がより明確になった。以上の理由で、当初期待した以上に計画が進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
数論幾何学の各方面で適用可能なp進的手法を開発・研究することを一つの目的としているので、強固な基礎を構築する必要がある。平成24年度は前年度に引き続き、数論的D加群、リジッドコホモロジーとリジッド解析幾何の基礎理論の整備とその応用の研究を行う。リジッドコホモロジーに関しては、研究代表者の都築が、必ずしも滑らかでない正標数代数多様体上のリジッドコホモロジーや過収束アイソクリスタルの圏について、その基本的な性質を考察する。特に、局所完全直交となる代数多様体に対して、Grothendieckによる純性定理のp進類似を最終的な目標とする。当面の目標としては、充満忠実性を考察する。また、分担者の志甫は過収束Fアイソクリスタルの表現論への応用を、連携研究者の阿部はp進Langlands対応への数論的D加群の応用を研究する。 2012年10月に、「p進コホモロジーとその数論幾何への応用」をテーマとした研究集会を開催して、この研究課題における成果発表をするとともに、関連する分野の若手研究者の成果を聞き、討論することで、この研究のさらなる展開へつなげる。 また、この課題の援助のもとで、2012年7月に東北大学にて「第11回仙台広島整数論集会」を開催する。
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Research Products
(29 results)