2013 Fiscal Year Annual Research Report
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22340035
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻井 正人 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (20251598)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 力学系 / エルゴード理論 / 準古典解析 / 量子カオス / 転送作用素 |
Research Abstract |
平成25年度の研究の進捗について、その概要を報告する.本年度の多くの時間はこれまで得られた結果をまとめて、証明の細部をつけることに費やされた. 本年度は4月に1ヶ月ローザンヌ工科大学(EPFL)に滞在し、同じ時期に滞在していた Pesin 氏や Pollicott氏と研究成果について議論する機会を得た.その議論は今後の研究の方向を考える上で非常に重要であったが、すぐに結果として示すことは難しい.滞在中に、負曲率多様体の測地流についての半古典ゼータ関数についての結果を論文として執筆し始めた.ただ、論文については一つ重要な変更が必要であることが滞在中に判明し、論文が長い(100ページ程度)こともありまとめるのに時間がかかった.結局、夏休みの大半を執筆に使い、論文は11月下旬に完成しプレプリントとして発表した.その後、プレプリントを読んだ若手の数学者からのコメント等をもとにプレプリントの細部の改訂作業を進めており、近日中に投稿予定である.また、同時に得られた転送作用素の離散スペクトルの「帯状構造」についての結果は、フランスの速報誌 Comptes Rendus に投稿し掲載された.証明を含めた本論文は共著者の F. Faure 氏(フーリエ研究所、フランス)が中心となって執筆中であり、私がそれを読んで細部をつめる予定である.また、昨年度完成したプレプリントは大部(200ページ前後)であることから Asterisque に投稿し、現在査読者からの意見をもとに改訂中である. 以上の論文の研究成果については、2つの国際研究集会(12月CIRM, 慶応大学)で発表した.また、東京大学での集中講義でもその概要を説明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は、これまで力学系理論やエルゴード理論にあまり関係のなかった準古典解析と強く結びつき、急速に発展した.特にF. Faure 氏という研究上のパートナーに恵まれたこともあり、研究は予想を超えたスピードと方向性で進展している.さらにフランス他の若手研究者の参入もあり今後は一つの重要な研究トピックになると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を受け継いで、論文を完成して出版し、5年間の本研究課題のまとめとしたい.また、研究発表や集中講義についてはそれを積極的に行っていく.また、近年、本研究課題に興味をもって参入する若手の研究者がいることから、彼らと議論して研究の新しい方向性について考察したいと考えている.
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Research Products
(3 results)