2011 Fiscal Year Annual Research Report
地球ニュートリノ方向検出のためのイメージインテンシファイアユニットの開発
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22340047
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三井 唯夫 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (20283864)
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Keywords | ニュートリノ / イメージング |
Research Abstract |
平成23年度は、イメージインテンシファイアユニットの「前段部分」である、直径50cm凹面鏡の開発を行う予定であったが、予定を変更して引き続き「後段部分」(イメージインテンシファイアユニットでシンチレーション光の像を結ぶ部分)の開発を行った。特に、NaI検出器を用いたガンマ線発光の撮影で、2重コンプトン散乱事象の撮影を試みた。これは、コバルト60からのガンマ線がNaI検出器内で2回のコンプトン散乱、または1回のコンプトン散乱と光電吸収を行った事象の撮影を目指し、発光形状からベータ線とガンマ線を区別する粒子識別の方法を開発するためである。粒子識別は、本研究計画の主目的では無かったが、次のような状況の変化に対応したものである。カムランドは、当初の予定では平成25年に、検出器本体である直径18メートル球形ステンレスタンクの法定検査を受け、その際にシンチレータの入れ替え、光電子増倍管のミラー取り付けを行う予定であった。この時に100機程度のイメージインテンシファイアユニット搭載を目指して、そのプロトタイプを本研究で作成する予定であった。しかし予算縮減と、消防法の特例が認められたことで、この改造が延期となった。いっぽう2重ベータ崩壊探索の新しい研究「カムランド禅」は予定通りスタートし、平成24年1月に最初の結果を発表したが、予想しなかったバックグラウンドが、ニュートリノレス2重ベータ崩壊のエネルギー付近に観測されてしまった。このバックグラウンドはおそらくガンマ線であり、粒子識別が出来れば2重ベータ崩壊との区別は容易である。以上の状況から、本計画で開発中のイメージインテンシファイアユニットでも、ガンマ線の多重コンプトン散乱事象を探索し、いくつかの候補事象を観測し、シミュレーションとの比較など、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はバイプロダクトと考えていた粒子識別に力点が移って来たため、光学系のノイズ低減への要求が厳しくなったことが原因のひとつである。2カ所以上の発光を同時に撮影するためには、例えば、シグナル1カ所とノイズ1カ所、といった「パイルアップ」の事象も許されない。そこでCCDカメラのノイズ低減をより厳しく進めて来たために時間を費やしてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、コバルト60線源と、NaI検出器を用いて、粒子識別方法の開発を続ける。上記のノイズの問題は、オフタイミング画像、すなわちシンチレータが光っていない瞬間の真っ暗な状態の画像を大量に取得して、各ピクセル毎に、この暗状態の光量を差し引く事によって、ようやく許容可能なレベルまで低減できた。そこで、本題である光学系の改良の方をさらに進めれば、小さなシステムでの粒子識別は十分可能と考えられる。
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