2011 Fiscal Year Annual Research Report
超高圧下で単体が示す特異な構造相転移と超伝導の理論的解明
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22340106
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
鈴木 直 関西大学, システム理工学部, 教授 (40029559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
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Keywords | 超高圧極限物性 / 単体 / 圧力誘起構造相転移 / 圧力誘起超伝導 / 第一原理計算 / 密度汎関数理論 / 進化アルゴリズム / 遺伝的アルゴリズム |
Research Abstract |
高圧下で高い超伝導転移温度をもつCaとLiに、周期律表で近い元素であるBeとMgについて、圧力誘起超伝導性の可能性を調べたところ、どちらも期待できない結果を得た。Auについても、同様な結果であった。理由は、圧力印加によってフォノン異常が起きるわけでもなく電子格子相互作用が弱いままだからである。 Auの圧力誘起構造相転移の可能性を調べた結果、250GPa付近でfcc→hcp転移を示すという従来主張されていた結果とは異なり、ABC積層(fcc)ともAB積層(hcp)とも異なる複数の積層構造を経て、1,000GPa以上で初めてhcp構造が実現されることが明らかとなった。 昨年度までに開発していた遺伝的アルゴリズムを採用した計算コードの開発改良と検証計算を行った。この計算コードは、探索アルゴリズムの局所最適化部分に、密度汎関数理論に基づく局所密度近似の第一原理計算を採用したものであり、広範な物質群に適用可能なものとなっている。単原子の単位胞1原子の系であるシリコン高圧相やリン高圧相の結晶構造についての検証計算を行った結果、この探索法の有効性を得るとともに、開発した計算コードの有用性を明らかにした。またリン高圧相を例にとり構造相転移現象を記述するエンタルピーや圧力等の物理量の検証を行った。この探索アルゴリズムでは安定相だけでなく準安定相の候補を見出すことが可能であるが、このことが高圧相の探索に非常に有効であることが示された。 探索アルゴリズムに採用されている第一原理計算は、結晶構造を探索するためには比較的確度の高い方法であるが、固体酸素のような複雑な系においては、膨大な計算資源や計算時間を必要とする。そこで第一原理計算には及ばないが、電子状態を記述する方法としてタイトバインディング(TB)法は非常に有効である。そこでTB分子動力学法を開発することを念頭に、原子間に働くTB法の有効ポテンシャルの開発を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非磁性単体の圧力誘起構造相転移と圧力誘起超伝導については予定通り研究は進捗しているが、磁性単体(具体的には酸素)については、結晶構造探索の計算規模が大きいため実際の成果が探索だけに留まっており、高圧相における超伝導状態の議論がまだできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の質を維持向上させながら研究計画を着実に推進して、所期の目的を達成することを目指す。
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