2012 Fiscal Year Annual Research Report
数十年スケールのイワシ資源量動態と中世温暖期に資源量低下を招いた機構の解明
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22340155
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
加 三千宣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (70448380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 正伸 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (60332475)
中村 有吾 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (00466468)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イワシ類 / 魚類資源変動 / 海洋生態系 / 気候変動 / 太平洋 / レジームシフト / 中世温暖期 |
Research Abstract |
別府湾においてイワシ類魚鱗堆積量を8年の時間分解能で解析を行ってきた。しかしながら、年代決定の精度が解明を阻む最大の問題となっていた。我々は、14C-ウィグルマッチング法を初めて適用し、高精度の年代決定を可能にした(Kuwae et al., 2013, JAES)。この年代精度の向上は、数十年スケール変動の振幅と周期性の解明の大きな一歩となった。これにより、マイワシの長期動態に関する次のような興味深い知見を得た。1)マイワシ資源変動(魚鱗年間堆積量)に、数十年スケール変動成分の振幅変化を伴う100年及び300年周期の変動が存在すること、2)サンタバーバラ海盆でも同様の数百年スケール変動があり、太平洋東西のマイワシ資源が数百年スケールで連動すること、3)これらの変動は、太平洋規模で起こる気候変動の一つPDO(Pacific Decadal Oscillation)の復元記録に見られる長周期パターンと一致することがわかり、太平洋東西のマイワシ資源にみられる数百年スケール変動は、大気-海洋変動によって駆動される可能性を示唆した。 さらに、日本周辺海域の古水温・古気候記録との比較から、中世温暖期前後におけるマイワシ資源動態の変容についての知見を得た。本研究で得られた別府湾と苫小牧沖のアルケノン古水温記録や下北半島沖浮遊性有孔虫殻酸素同位体比記録、既存の福島沖及び三陸沖アルケノン記録と比較した結果、1)日本周辺でAD800年からAD1200年にかけて温暖な気候であることがわかり、これが日本周辺海域の中世温暖期と呼ばれる時代であると判断されること、2)その時代の前後でマイワシ資源は、当初予想された周期、振幅の顕著な変化が認められないこと、したがって、3)温暖な海洋環境で、数十年間続くマイワシレジームが消失することはないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度、噴火湾トラップ試料の解析、苫小牧沖コアの解析を進めるとともに、別府湾コアの高精度年代決定に関する論文を公表してきた。年代精度の向上は、数十年スケール変動の振幅と周期性の解明の大きな一歩となった。解析の結果から、当初の目的であった中世温暖期前後における周期・振幅の変容に関する知見が得られ、概ね目的は達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的は、ほぼ達成されたが、今後成果の迅速な公表のために、論文執筆・国際誌投稿を進めている。 昨年度、苫小牧沖コアの年代決定が行えなかったため、平成25年度で14C年代測定を行っている。年代測定は、平成25年2月に分析依頼を予定していた測定業者が試料量不足のために測定できないことが判明し、微量で測定できる業者に測定依頼を変更せざるを得なかった。その測定には、3ヶ月かかるため、平成24年度内での予算執行ができない事態となった。変更の事由が生じたのは繰越申請期限以降だったために、繰越申請もできなかった。年代測定は、本研究の要であるため、24年度残額の持ち越しによる次年度の使用を申請したい。
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Research Products
(6 results)