Research Abstract |
核融合プラズマ閉じ込め装置での異常輸送の新たな要因として注目を集めている「電子温度勾配(ETG)不安定性(ETGモード)駆動乱流」の発生メカニズムとそれに伴う輸送現象を解明することを目的として,初年度は,電子温度の空間勾配を能動的に制御できる装置を開発し,電子温度勾配がプラズマ中の不安定揺動に及ぼす効果について調べた. 1. 高電子温度の電子サイクロトロン共鳴プラズマと低温の熱電子を,2種類のメッシュグリッドを用いて,空間制御して重畳した結果,ETGを制御して形成することに成功した. 2. ETGを形成することによって,周波数が4~8MHzの高周波揺動が励起されることが明らかになった.また,その揺動強度が,ETG強度に依存して変化することも観測されたため,この高周波揺動はETGモードであると結論づけられる. 3. ETGを形成した時,高周波揺動と同時に周波数が3~7kHzの低周波揺動も観測され,その揺動強度がETG強度に比例して増大することが分かった.この低周波揺動は,径方向の電位勾配,すなわちE×Bシアの強度が強い場合に励起されやすいことが観測されたため,ケルビンヘルムホルツ不安定性であると同定でき,それが高周波揺動との相互作用を介して,ETGにより変調され助長されたと考えられる. 4. バイスペクトル解析を用いてETGにより励起された高周波揺動と低周波揺動の相関関係を調べたところ,これらの二つの揺動間に特徴的なバイコヒーレンスが観測された.したがって,ETGは,電子が関与する高周波揺動のみならず,その高周波揺動との結合により低周波揺動に対しても作用することが明らかとなった.
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