2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子の集積体表面を利用した新規な大気圧レーザー脱離ソフトイオン化法の開発
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22350040
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
荒川 隆一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (00127177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 英也 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (50322285)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | レーザー脱離イオン化法 / 大気圧MALDI-MS / 磁性ナノ粒子 / 大気圧SALDI-MS / 質量分析イメージング / 白金スパッタ蒸着 / 添加剤 |
Research Abstract |
本研究の目的は、環境中の低分子量の汚染物質、医薬品、食品・工業材料の添加剤を簡便にハイスループット質量分析(MS)するための新しい「大気圧」表面支援レーザー脱離イオン化法(AP-SALDI)を開発することである。 平成24年度は、(1) 金、白金、酸化鉄などを利用した構造体を創製した。それらの磁性ナノ粒子と試料との相互作用を利用して,標的試料のみを河川中、血液中から捕捉・分離し、抽出操作をしないで直接レーザー脱離イオン化質量分析で検出・同定できるアフィニティSALDI-MSに成功した。しかし、これらのFe3O4、CoCの磁性ナノ粒子を用いた大気圧下でのAP-SALDIのイオン化効率は、従来の真空SALDIに較べて低いことがわかった。(2) 低いイオン化効率の原因の調査中に、金属クラスター用の新規な有機マトリックス、α,β-ジフェニルフマロニトリル(DPF)を見いだした。このマトリックス用いることにより,従来、困難であったフラグメントイオンなしの状態で[Au25(SCH2CH2Ph)18]-イオンを検出できた。(3) 最近、MALDI-MSイメージングは、位置情報と分子量の情報が同時に得られるので、医療分野を中心に精力的に研究されている。しかし、① 均一に有機マトリックスを試料に塗布するのが難しく空間分解能の悪化の原因となる、② 有機マトリックス由来のピークが低分子化合物の検出の妨害となる、③ 試料に導電性が必要ため薄切片の作成などの煩雑な前処理が必要などの問題点がある。そこで我々は、迅速・簡便に均一な金属ナノ構造体を作成できる白金スパッタ蒸着に着目し、SALDI-MSイメージングへの応用を試みた。ガラスプレートのTLCで分離した試料について、白金蒸着SALDI-MSイメージングを検討し、良好な結果が得られ報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表面支援レーザー脱離イオン化法(SALDI)で利用するためのナノ粒子、ナノ構造体機材の開発は順調に進展している。また、標的試料のみを河川中、血液中から捕捉・分離し、抽出操作をしないで直接アフィニティSALDI-MSが可能な表面修飾技術の開発も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
質量分析イメージング(MSI)は、位置情報と分子量の情報が同時に得られるので医療分野への応用が非常に注目されている。今後、迅速・簡便に均一な金属ナノ構造体を作成できる白金スパッタ蒸着に着目し、工業材料中の添加剤の表面分布解析にSALDI-MSIの応用を展開する。これまでに開発した大気圧SALDI用イオン源を結合した質量分析装置を利用して、磁性ナノ構造体の大気圧レーザー脱離イオン化能の評価を引き続き行う。
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