| Research Abstract |
1. S=1/2 2本足スピン梯子格子系(Ca,Sr,La)_<14>Cu_<24>O_<41>におけるスピンによる熱伝導の向上の研究結晶中のスピン欠陥を取り除くことによって,スピンによる熱伝導が著しく向上することが期待できるため,昨年度は,原料純度を3N,4N,5Nと変化させてCa_9La_5Cu_<24>O_<41>の単結晶を育成し,熱伝導を測定したが,スピンによる熱伝導の向上は見られなかった.そこで,本年度は,Sr_9La_5Cu_<24>O_<41>単結晶も加えて,酸素アニールによる酸素欠損の補填を試みたが,スピンによる熱伝導は向上しなかった.しかしながら,Sr_<14>Cu_<24>O_<41>に対して酸素アニールを施すことによって,スピンによる熱伝導を向上させることに成功した.Ca_9La_5Cu_<24>O_<41>やSr_9La_5Cu_<24>O_<41>においてスピンによる熱伝導が向上しなかった原因は,(Ca,Sr,La)層と梯子層のミスマッチにより梯子層に歪みが生じ,これが熱輸送を妨げていると結論した.今後は,大きなイオン半径を持つBaを置換してミスマッチを解消し,アニールによって,さらなるスピンによる熱伝導の向上を目指す.
2. S=1/2 1次元反強磁性イジングスピン系ACoX_3におけるスピンによる熱伝導の研究
スピンによる熱伝導の研究は,主にハイゼンベルグスピン系で行われており,イジングスピン系では行われていない.理論的には,イジングスピン系ではスピンによる熱伝導が著しく小さくなると予想されている.今回,イジングスピン系RbCoCl_<3'> RbCoBr_<3'> CsCoCl_<3'> CsCoBr_3の熱伝導率を測定し,イジングスピン系においてもスピンによる熱伝導が存在することを発見した.しかし,スピンによる熱伝導の原因は,これらの物質が持つわずかなハイゼンベルグ性のよるものかもしれない.今後は,これを検証する予定である.
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
S=1/2 2本足スピン梯子格子系(Ca,Sr,La)_<14>Cu_<24>O_<41>において,昨年度におけるスピンによる熱伝導が向上しなかった原因を特定し,スピンによる熱伝導の向上を達成した.また,イジングスピン系でもスピンによる熱伝導もつ可能性があることを示す結果を得ることができた.
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| Strategy for Future Research Activity |
1. 2本足スピン梯子格子系(Ca,Sr,La)_<14>Cu_<24>O_<41>において,SrサイトにBaをドープすることによって,ミスマッチを解消して,スピンによる熱伝導のさらなる向上を目指す.
2.2次元スピン格子系La_2CuO_4においてスピンによる熱伝導の向上を行う.
3. S=1/2 1次元反強磁性イジングスピン系ACoX_3(A=Rb,Cs;X=Cl,Br)で観測されたスピンによる熱伝導の起源を解明するため,より正確なスピンによる熱伝導の絶対値を見積もる.
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