2010 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理分子動力学法に基づくトライボ反応シミュレータの開発と自動車用潤滑剤の設計
Project/Area Number |
22360065
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保 百司 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90241538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島崎 智実 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40551544)
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Keywords | 第一原理分子動力学法 / トライボ反応シミュレータ / 自動車用潤滑剤 / 超低摩擦 / 高耐摩耗性化 / ダイヤモンドライクカーボン |
Research Abstract |
近年、省エネルギー対策、地球温暖化対策に対する強い要請から、摩擦・摩耗・潤滑、いわゆるトライボロジーに関する社会的要求が厳しさを増している。具体的に自動車業界では、エンジン出力エネルギーの約30%が摩擦に消費されていることから、エンジンオイル用フリクション低減剤、摩耗防止剤の高性能化によるエンジン摺動部の低摩擦化・高耐摩耗性化の実現が社会的に急務の課題となっている。特に上記課題には迅速な対応が求められることから、実験研究に加え、理論的添加剤設計手法の確立が望まれている。そこで本研究では、経験的なパラメータを使用せずに電子状態計算を行うことが可能な第一原理計算手法に基づき、トライボ反応ダイナミクスを解明することが可能なトライボ反応シミュレータの開発を目的とした。また、近年の実験研究により、摩擦下における電子放出、いわゆるエキソエレクトロン現象がトライボケミカル反応に大きな影響を与えることが知られている。そこで本研究ではエキソエレクトロン現象を解明可能な第一原理分子動力学シミュレータの開発をも目的とした。 初年度は、当研究室で開発済みのGaussian & Fourier Transform(GFT)法に基づく第一原理分子動力学計算プログラムに対して、摩擦プロセスのシミュレーションが可能な機能を追加することで、第一原理分子動力学法に基づくトライボ反応シミュレータを開発した。具体的には、2枚の基板で挟まれた潤滑膜に対して、片方の基板のみをスライドさせることで、摩擦プロセスにおける化学反応シミュレーションを可能とした。さらに、開発プログラムを活用することで、ダイヤモンドライクカーボンの摩擦プロセスにおける電子状態ダイナミクスを解明することに成功した。その結果、ダイヤモンドライクカーボンを水素終端することで、低摩擦を実現できることを明らかにした。
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