2011 Fiscal Year Annual Research Report
高度な量子情報通信機能に向けた半導体中の単一不純物準位の制御と利用に関する研究
Project/Area Number |
22360133
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐久間 芳樹 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, グループリーダー (60354346)
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Keywords | 量子閉じ込め / 量子ドット / 励起子 / 単一光子 / 等電子準位 / 不純物 |
Research Abstract |
平成23年度は、本研究の目的に沿いながら研究を進め、下記の成果を得た。 1.等電子トラップ適用材料の拡張と新たな等電子トラップ不純物の探索 平成22年度の研究で、等電子不純物である窒素(N)のδドープを行ったGaAs:N試料でNの関与した準位が空間局在した発光センターを形成することを顕微PL法で確認し、アンチバンチング特性の観測によって単一光子の発生を世界で初めて実証した。平成23年度は、まずこれらの研究成果をApplied Physics Letters誌に投稿して公開した。一方、従来のGaAs:Nでは個々の等電子準位の発光エネルギーがばらつくという技術課題があったが、平成23年度からGaAs:Nでエネルギーの揃った輝線発光を得るためのNドーピング手法の検討を開始した。この結果、MOCVD法でN原料に使用しているジメチルヒドラジン(DMHy)を1原子層のGaで終端したGaAs(001)面上に供給するか、DMHyとGa原料であるトリエチルガリウム(TEGa)を一緒にGaAs(001)上に供給すると、従来のドーピング手法では得られなかったエネルギーの揃った輝線スペクトルが観測されることを新たに見出した。観測された輝線スペクトルはNNA(発光波長840nm @25K)、NNB(868nm @25K)、NNF(833nm @25K)の3種である。今後、新たに見出したこれらの発光中心の光学特性について詳しく調べ、関与する不純物や原子配置に関する情報を探索する。 2.GaAs:Nの束縛励起子の光学特性評価 これまでアンチバンチング特性を観測したGaAs:N中の単一発光センターについて、再結合寿命、偏光特性の評価を行った。再結合寿命は発光エネルギーと同様に個々の局在準位ごとにばらつきが観測されたが、観測の範囲では650psが最短の値であった。これはGaP:Nで観測された寿命よりも1~2桁短い値であり、母結晶であるGaAsの直接遷移型のバンド構造に起因すると解釈できる。また、発光強度も寿命を反映して充分強いことがわかった。一方、これらの発光センターの高分解能スペクトルを調べた結果、いずれも微細構造は1成分からなり、[110]または[1-10]に直線偏光していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GaP:N系で見出した等電子不純物を使った単一光子発生技術を、適用材料やデバイス応用技術の両側面から発展させることが本研究の主要な目的である。これまで、この技術を直接遷移型バンド構造を持つ代表的な半導体であるGaAs系に適用し、単一光子発生の実証および再結合寿命や偏光特性を明らかにした。この点で技術的意義は大きいと言える。また、窒素(N)ドーピング手法の探索を通じて、GaAs:N系で発光エネルギーの揃った輝線発光の観測に成功し、新展開の端緒をつかんだことも評価できる。しかし、その一方で単一光子発生の高温化や量子井戸構造の適用による波長制御技術の開発が遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
GaP:NとGaAs:N系材料で開発した技術をベースに、量子井戸構造を利用するなどして高温動作や波長制御技術の開発に注力する。これと並行して、特にGaAs:N系の発光中心の光学特性の詳細やドーピング手法と関与する不純物原子種の関係について研究を深める。
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Research Products
(18 results)