2012 Fiscal Year Annual Research Report
近世以前の土木遺産の現状確認による価値評価、ならびに、地域的特徴の抽出とその分析
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22360208
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
馬場 俊介 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (10111832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 輝久 岡山大学, 環境管理センター, 准教授 (20304339)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 土木遺産 / 近世以前 / 地域資産 / データベース / 景観法 |
Research Abstract |
本来の研究の目的は、全国の古代〜江戸期までに造られた交通(街道、河川舟運、海運)、産業(農業・飼馬業、漁業、鉱業)、 防災(海岸、河川)、生活(上水)、行政(測量)、軍事(台場、狼煙場)関連の遺産群の全貌を、各種のデータ調査により初めて明らかにし、かつ、その成果を広く公開し「地域資産」としての認識を各地元で高めてもらい保全・活用に資することにあった。この方針に沿い、現地・資料調査を進めるとともに、WEB上でのデータの公開に多大の時間を割いてきた。データを公開した都道府県は、平成24年度末の段階で、北海道、青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島、新潟、群馬(一部)、茨城、千葉、埼玉、東京、山梨、長野、愛知、三重、岐阜、富山、石川、大阪、和歌山、岡山、山口、香川、徳島、福岡、佐賀、熊本、沖縄の30都道府県に達した。うち、今年度追加した埼玉はデータ数1494、写真660点、千葉はデータ数1139、写真717点と多くの無償の協力者を得て、質・量ともに充実したものとなり、埼玉と千葉という接近した地域にありながら全く独自の特徴と類似した(しかし、全国のその他の県とは全く異なった)特徴を明らかにすることができた。なお、この2県以外にも既公開となった都道府県においては、『景観法』に立脚して景観行政団体が個々の景観条例を作成するにあたり、見落とされがちな土木関連の遺産を、「地域の歴史と文化」を体現する資産として保全・活用する際に活用できる程度のデータの悉皆性の追求と地域特性の把握保持に努めた。この種のデータの集積・公開は本邦初の事象であり、これら遺産群の立場が、「価値が認識されていなければ、何のためらいもなく改修・破壊される」状況にあることを思えば、WEB上での公開は、認知度を上げるための重要な社会的貢献であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国47都道府県中、WEB上で公開された都道府県は30であり、その中には、件数の多い埼玉、千葉、東京、愛知、大阪が含まれているため、3分の2に達したと理解している。また、現地調査は栃木、静岡、京都、長崎を除き全国都道府県に少なくとも2回以上実施し、90%の達成度を担保した。主な目的がWEB公開にあるため、論文執筆は二の次となっているが、それでも、全データ中8割以上を占める道路遺産について、道標、町石、街道常夜灯にかかわる研究論文も執筆・登載された。本研究の目標は十分に達成されていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の夏までには、残る17府県中、兵庫、鳥取、島根、広島、愛媛、高知、鹿児島のデータのWEB公開が完了できる予定である。その後は、本年度が本研究の最終年度であるため、本研究の成果を150ページほどの短縮版にまとめ、全国の市町村に配布することを目標の1つに掲げることにしたい。というのも、WEB公開では詳細なデータは周知できるものの、その背景に隠された地域ごとの特徴を表から読み取ることは困難なので、地域特性だけをクローズアップし、現存する土木遺産とリンクさせるような冊子の存在は必須と考えるからである。残された10県のデータのWEB公開は、原データは本年度末の段階で完了するため、随時公開が可能である。
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Research Products
(1 results)