2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22370058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 重彦 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70402758)
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Keywords | タンパク質機能 / 酵素反応 / QM/MM-FE法 / 分子動力学法 / 構造変化経路探索 / 線形応答理論 / カルモジュリン / 分散-共分散行列 |
Research Abstract |
本課題研究は、酵素反応解析のためのQM/MM自由エネルギー法、及び大域的タンパク質構造変化のシミュレーションを行うlinear response path following(LRFE)法を開発することにより、タンパク質機能発現の分子機構を解明することを目的とする。 本年度は以下の成果を得た。(i)ReweightingによるQM/MM-FE法の開発(QM/MM RWFE-SCF法)。通常のMD法により得られるMM構造のサンプルよりQM/MM自由エネルギー汎関数を構築し、その変分によりSCF計算を行うQM/MM RWFE-SCF法を開発した。長距離クーロン相互作用をEwald法を用いて計算することにより、従来のQM/MM法とは異なり、カットオフをしない高精度の計算を実現した。更に、従来のQM/MM法に比べて、格段に多いMM構造サンプル数を得ることが可能となった。実際に、本手法を適用することにより構造サンプル数の収束を評価したところ、従来に用いられているサブナノ秒程度のMDトラジェクトリ計算では自由エネルギーが収束せず、数十ナノ秒のMDサンプルが必要となることが明らかになった。(ii)LRFE法の開発。カルモジュリンのN末端ドメインに対して、カルシウムイオン結合による大域的構造変化をテスト系にして開発を行った。まず、線形応答理論に必要となるカルシウムイオン結合を表す局所的外力及びタンパク質の分散-共分散行列の評価を行った。局所的外力であるが、様々なテストの結果、カルシウムイオンとタンパク質の相互作用の平均力を用いるのが最も良い振る舞いを与えることが分かった。次に、分散-共分散行列であるが、その安定な構成のためには、最低でも20nsの平衡MDトラジェクトリが必要であることがわかった。それらを用いて、大規模構造変化を引き起こすMDルーチンを開発した。
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