2011 Fiscal Year Annual Research Report
メタロプロテアーゼに依存した血液循環開始機構の解明
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22370076
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬原 淳子 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (60209038)
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Keywords | メタロプロテアーゼ / ADAM8 / 造血 / 血液循環 / 赤芽球 / 血管 / ゼブラフィッシュ / 細胞間接着 |
Research Abstract |
脊椎動物発生過程において最初の造血の場(ほ乳類では卵黄嚢壁の血島)では主に胎児型赤血球が産生されるが、意外にも、そこで産生される赤血球がどのように循環し始めるのか、その制御機構は殆ど解明されていない。我々はゼブラフィッシュ胚のライブイメージングにより、胎児型赤血球の循環開始が循環系内で働くメタロプロテアーゼ活性に依存すること、血球で高発現する膜型メタロプロテアーゼADAM8を必要とすることを発見した。本研究はその発見を発展させ、血液循環開始機構をADAM8を中心とする血球血管の相互作用・接着制御の観点から解明し、能動的プロセスとしての循環開始機構の存在を証明することを目的としている。本年度は、まずADAM8が接着を解除できない場合に、血管にどのような変化が起こるかを検討した。その結果、接着が解除できないと、節間動脈の伸長が阻害されることを見いだした。さらに、節間動脈伸長時に節間動脈や大動脈において発現する遺伝子発現に異常が生ずることを見いだした。次にADAM8によって解除される血球と血管の接着の分子実体の解明を行った。ADAM8に依存した血球と血管の接着解除が起こらない場合、接着斑の数が上昇することから、この接着がインテグリンに依存するのではないか、と考えた。どのインテグリンが関与するのか、示唆的な結果を得ることができた。接着⇒接着解除にともなう、血球・血管の変化を、遣伝子発現や血管をGFP(Fli:GFP)、血球をRFP(GATA-1:RFP)でラベルしたゼブラフィッシュ胚を用いたライブイメージングにより、いくつかの観点から検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
節間動脈伸長時に節間動脈や大動脈の内皮細胞と赤芽球の相互作用が、内皮細胞の遺伝子発現に影響を及ぼしていることを生体内で示したこと、内皮細胞と赤芽球の接着因子のひとつを突き止めたことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
血管内皮細胞と赤芽球の接着⇒接着解除にともなう、血球・血管にもたらされる変化を、遺伝子発現や血管をGFP(Fli:GFP)、血球をRFP(GATA-1:RFP)でラベルしたゼブラフィッシュ胚を用いたライブイメージングにより、いくつかの観点から検討し、それによって、これらの細胞間相互作用の意義について明らかにしたい。また、ADAM8はムチン型接着因子であるPSGL1を効率よく切断する活性を有する膜型プロテアーゼであるが、赤血球前駆細胞で発現するADAM8の生理的な基質を同定するとともに、このプロテアーゼ活性の時間的・空間的制御を明らかにしたい。
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