2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島の南と北でヒト集団の生活誌と系統の多様性を探る
Project/Area Number |
22370087
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
石田 肇 琉球大学, 医学研究科, 教授 (70145225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
弦本 敏行 長崎大学, 大学院・医歯薬学総台研究科, 教授 (60304937)
分部 哲秋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (50124847)
増田 隆一 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (80192748)
米田 穣 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (30280712)
太田 博樹 北里大学, 医学部, 准教授 (40401228)
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Keywords | 生物考古学 / 古代DNA / 縄文時代人骨 / 生活誌 / 同位体分析 |
Research Abstract |
先島諸島を含む琉球列島の人々の遺伝的多様性を調査するために、ミトコンドリアDNA,Y染色体,常染色体STRを分析した。系統分析で、母系(ミトコンドリアDNA)でも、父系でも先島諸島の人々は、台湾原住民ではなく、日本列島の人々に近かった。宮古島と北海道アイヌの人々は、縄文マーカーと想定されるYAP(+)の頻度が最高値を示した。遺伝的多様性の解析から、宮古島と石垣島の人々は人口減少もしくは極端な隔離はないことが示された。すなわち、新石器時代の台湾からの遺伝的寄与は現代の先島住民にはないこと、琉球列島の人々は、縄文時代人の直接の子孫と考えられている北海道アイヌと共通の系統をもつようであること、などが示された。 北海道の古代人集団のABO血液型遺伝子の多型を、縄文、続縄文、オホーツク文化人骨を用いて調べた。5つのABOアリルが同定され、現代のアジア、オセアニア、ヨーロッパ集団と比較した。主成分分析の結果、縄文・続縄文とオホーツク文化人集団はともに現代アジア人集団に含まれる。しかし、この二つの集団の遺伝的特徴は互いに大きく異なり、これまでの結果と一致するものであった。 オホーツク文化人の食性を分析するために、炭素窒素の同位体、さらに、グルタミン酸とフェニルアラニンの窒素同位体を用いて、分析した。その結果、炭素窒素同位体比は類似するが、アミノ酸の窒素同位体組成は、北海道北部と北海道東部でオットセイの寄与が大きく違うことを示唆した。つまり、道北では、0-24%、道東では78-80%である。 オホーツク文化の人々には、変形性関節症の所見が数多く見られる。とくに肘や脊椎に多い。遺物として残っている道具と他の民族誌などを参考にすると、具体的な労働が見えてくるかもしれない。そこで、脊椎、四肢の大関節について、調査を行った。腰椎で頻度が高い。男女差はそれほどでないが、40歳未満では、男性のほうの頻度が高い。腰椎でも、椎体では、男性に重度の関節症が多く、反対に、椎間関節では女性に重度の関節症が多い。これらの結果は、オホーツク文化人の特徴的生業である海獣狩猟・漁労のための、船を漕ぐ動作のために体幹の屈曲-伸展の動きや、不安定な船上での作業である網を引き上げる動作は体幹の屈曲姿勢保持が強いられるmechanical stressが加わったと考えられる。
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Research Products
(6 results)