2011 Fiscal Year Annual Research Report
形態と遺伝子から解明する近世アイヌ集団の起源と成立史
Project/Area Number |
22370088
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
篠田 謙一 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, グループ長 (30131923)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 登 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (60282125)
百々 幸雄 東北大学, 医学研究科, 客員教授 (50000146)
梅津 和夫 山形大学, 医学部, 准教授 (10091828)
近藤 修 東京大学, 理学研究科, 准教授 (40244347)
|
Keywords | アイヌ / DNA分析 / 形質人類学 / 系統 / 成立史 |
Research Abstract |
計画の2年目である本年は、昨年の全国調査の結果明らかとなった札幌医科大学と噴火湾文化研究所が所有する近世アイヌ人骨から形態とDNAの基礎データの集積を行った。昨年までに収集した札幌医科大学所蔵の近世アイヌ人骨89個体からDNAを抽出し、ミトコンドリアDNAのD-ループ領域の塩基配列とコーディング領域のSNP,から各個体のハプログループを決定する作業を進めた。その結果、ほぼ全てのサンプルの分析を終了した。これによって近世アイヌの遺伝的な特徴についての情報を得ることができた。また噴火湾文化研究所が所蔵する有珠4号遺跡の人骨のDNA分析を進めている。これまでの研究で近世アイヌの遺伝的な特徴が明らかになってきたが、そこで注目されるのは、当初考えていたよりもアイヌ集団内部での遺伝的な多様性が大きいことだった。特に道南・道央・道東の3地域に分けてみるとその違いはいっそう顕著になることが判明した。これは従来の形態学的な研究でも一部の研究者によって指摘されており、形態と遺伝子の研究結果が共通の結論を導いたことは興味深い。更にデータの解析を進めてその意義を明らかにする研究を進めている。また、北海道集団の成立史を明らかにするために、今回得られた近世アイヌ集団のDNAデータを、これまで比較対象としていた北海道の縄文人だけでなく、東北の縄文人も含めた分析を行った。更に北海道縄文・続縄文時代人全体の遺伝的特徴を可能な限り明らかにするため、特に道東地域を中心に試料の出土地域と数を増加させ、関連する人類集団の結果と比較検討することで、北海道縄文・続縄文時代人の遺伝的特徴を網羅的に明らかにする研究も同時に進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度までに目標としていた近世アイヌ人骨のサンプリングを終了している。また、DNA分析も順調に終了しており、その一部は学会発表等で公開していることから、概ね当初計画が順調に遂行されていると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度上半期にはDNA実験を全て終了する予定である。その後、研究グループ内での会合を持ち、形態学と遺伝学のデータの突き合わせを行い、アイヌの成立史に関する新たなシナリオの構築を目指す。従って今年は各研究者間の連絡を密にして、情報の共有をしながら研究成果の取りまとめを行っていく。
|
Research Products
(13 results)