2011 Fiscal Year Annual Research Report
耐塩性植物の創生をめざしたNaおよびK輸送体の統合的基盤の構築
Project/Area Number |
22380056
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
魚住 信之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40223515)
|
Keywords | AtHKT1 / 耐塩性 / Na循環系 / イオンバランス / AtNHX1 / 概日性リズム発現 / ルシフェラーゼ遺伝子 |
Research Abstract |
Naの植物細胞への流出入経路の可能性が高いAtHKT1植物体のNa循環系およびイオンバランス制御機構の解明を億滴とする。NaやK輸送体の理解に加えて、輸送体の連携や協調による耐ストレス機構の解明をはかる。シロイヌナズナAtHKT1 promoterには様々な制御因子が存在していることが明らかとなっている。また、開始コドンより上流5kbに存在している2回の反復配列の有無を施した5.4kbと2.3kbのプロモーター配列にGUSを連結した遺伝子を植物体に導入した。5.4kbのプロモーターの単離に時間がかかった。この理由は長さの問題に加えて、プロモーターの制御因子の存在や、二次構造の形成が影響を与えていると考えられた。また、作成したプラスミドの形質転換効率も極めて低いことが分かった。AtHKT1をシロイヌナズナathkt1変異株に強制発現させるために、AtHKT1プロモーターの下流にAtHKT1を導入した遺伝子を作成した。この他に、NaよりもKに選択性の高いS68GのAtHKT1輸送体、K選択性の高いTaHKT1も同様にプラスミド構築と植物へ導入した。Na循環の中心的役割を担う輸送であるAtHKT1やAtNHX1-8の概日性リズム発現を検討する。各遺伝子promoter下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結して、植物野生株に本遺伝子を導入した。ヘテロ体からホモ体を複数株得るために、PCRにおける遺伝子導入具合の検討と形質転換体の作成を行った。植物においてもNa/K輸送体と連携して機能すると考えられることから、まだ機能解析されていないシロイヌナズナのCHXはKを輸送する活性を有しており、細胞内小器官で機能して、細胞内イオンの恒常性に関与していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AtHKT1プロモーターがプラスミドの構築に影響を与えるためと予測されるが、コンストラクトの作成に時間がかかった。これについては、本遺伝子配列が何らかの機能を果たしているため、大腸菌内における細胞毒性を示すものと考えられることから、本プロモーターが何らかの機能を有することを示唆するものであることから、今後新たな知見が得られる可能性が期待される。予備検討ではいくつかの植物体が特徴的な発現様式を示すデータが見いだされている。シロイヌナズナのCHXは、Na/HもしくはCa/H交換輸送体(アンチポーター)をコードしていると考えられていた。ところが、Kを輸送する活性を有しており、細胞内小器官で機能して、細胞内イオンの恒常性に関与していることが明らかとなった。環境ストレスに対抗する輸送系が新たに解明されたこととなり、細胞内イオン恒常性に関与していることが明らかとなった。詳細な解析によって環境ストレスに関与する結果を確認していく。本研究を計画通り進めていくことで輸送体の意義が明らかになると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
作成しつつある形質転換植物の育成をすすめる。震災により時間的ラグが生じたが、追って研究をすすめることで予定していた目標に向かって進める。前年度には、AtKUP1の発現を制御すると期待された転写因子が予想通りの機能を示さなかったが、今回新たにKUPの機能に関する手がかりが得られている。KUPは原核生物から真核生物に存在する輸送体であるが、その構造と機能解析に関する結果は乏しい。大腸菌などのKupを含めて発現系を確立して、膜貫通構造を明らかにする。レポータータンパク質をKupの推定される膜貫通領域の前後に融合させてトポロジー検索を行っていく。今後、その結果に応じて、イオン選択に係わる残基の同定に重要なアミノ酸を推定する。植物のKUPと大腸菌のKupに共通するアミノ酸の同定等により、植物のKUPの機能とそれに基づいた役割が解明に近づくと考えている。 コンストラクトの作成に時間がかかったAtHKT1プロモーターのプラスミドに関しても完成して植物への導入が行われた。今後、環境変化による発現を検討する。乾燥の日周期と関連している明暗の影響に関しても、発現解析をすすめることにより解析を行う。また、プロモーターには2種類の繰り返し配列が存在しており、この配列が発現に重要な働きを担っている可能性が大きい。この配列の機能解明を一つの指標として環境変化への適応と組織発現を調べる。
|
Research Products
(6 results)
-
-
[Journal Article] Plant-specific cation/H+ exchanger 17 and its homologs are endomembrane K+ transporters with roles in protein sorting2011
Author(s)
Chanroj, S., Lu, Y., Padmanaban, S., Nanatani, K., Uozumi, N., Rao, R., and Sze, H.
-
Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 286
Pages: 33931-33941
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-