Research Abstract |
微細藻類におけるデンプンや脂肪酸の合成を律速する要因であるCO_2輸送の改良と,水素発生の機構解明を目指して以下の点について明らかにした。(1)CO_2応答性遺伝子の網羅的同定を目指して,細胞が低CO_2ストレスにさらされた時と従属栄養的に生育している時における遺伝子発現を次世代シーケンサーを用いて解析した。野生型株5Dの連続高CO_2条件(HC:5%CO_2を通気,120microE m^<-2>S^<-1>),低CO_2ストレス条件(LC:0.04% CO_2を通気,120microE m^<-2>S^<-1>)へ移行後,20分,1時間,2時間,4時間の細胞から全RNAを抽出して,36ヌクレオチド長の総計48, 200, 758リードを取得し,クラミドモナスゲノム上にマッピングを行った。100塩基ごとにリード数を集計し,サンプル間でリード数が変動するゲノム領域を検索したところ,リード数がLC条件で5倍以上に上昇する遺伝子を250個同定することができた。その中には,これまでに,LC条件で誘導されることが知られている炭酸脱水酵素遺伝子CAH1などの他に,転写因子や膜結合型輸送体の相同遺伝子が含まれていた。(2)CO_2欠乏ストレス応答に必須な因子CCM1は,少なくとも3ヶ所リン酸化を受けていることが明らかになった。そこで,それらの部位について変異を導入した変異型タンパク質をccm1変異株に導入したところ,変異を相補したことから,これらのリン酸化部位は,機能的に重要ではないことが判明した。(3)野生型C9株の細胞を嫌気的でイオウ欠乏培地に移すと,水素ガスを発生することを確認した。この水素生産誘導前と後でヒドロゲナーゼ遺伝子の発現を比較をノザンブロット法で比較したところ,転写レベルではHYD1の発現誘導は起こっていないことが明らかになった。そこで,トランスクリプトーム解析によって網羅的に水素発生に関する遺伝子を同定することは困難であることが判明した。
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