2012 Fiscal Year Annual Research Report
東北地方における地域資源の管理・利用に関する社会史的研究:「国有林史料」を中心に
Project/Area Number |
22380079
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 衛拡 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70177476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯澤 規子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20409494)
成田 雅美 筑波大学, 名誉教授 (30164502)
浪川 健治 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50312781)
福田 恵 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (50454468)
脇野 博 秋田工業高等専門学校, 人文科学系, 教授 (80220846)
渡部 圭一 自治医科大学, 看護学部, 非常勤講師 (80454081)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 藩営林 / 国有林 / 地方知行制 / 地域資源 / 地域社会史 / 東北型農村 / 地域貢献 |
Research Abstract |
1、研究会の開催/2012年6月17日(筑波大学)で開催した。①「2011年度の成果」、②「廃藩置県後の官林伐木規制」、③「北秋田地域調査の成果と課題―2011年度聞き取り調査から―1 自治会、林業」、④「同2 生業と信仰・行事、人生儀礼と村落内組織」、⑤「横手御城付山林の基礎的考察」、⑤「横手殖林社の史料とその特徴」の報告があり、2012年度の課題を明確化し、調査の方向性を確認した。 2、史料・ヒヤリング調査と地域貢献/(1)①東北森林管理局と同青森事務所史料、②秋田県公文書館の秋田藩林政と明治初期秋田県政文書、③秋田県横手市史編さん室の「横手殖林社」の史料整理・目録化、同社を中心とする社会構造に関する聞き取り調査、④秋田県北秋田市阿仁地区、森吉地区、鷹巣地区の地方整理・目録化、重要文書の撮影、地域社会の特徴に関する聞き取り調査を実施した。(2)北秋田市教育委員会などと協力し、市民参加型の地方文書整理を進めることとなった。そのため、阿仁公民館、森吉公民館、綴子公民館にて研究の地域還元と史料整理法の講習を目的に、合計8回のワークショップを開催した。 3、分析/研究協力者(教員・院生)も含め、北東北の地域資源管理・利用史や地域社会・文化史に関する研究と、これらを解明するための比較研究を進め、雑誌論文・学会発表・図書として公開した。特に、芳賀(2013)は19世紀秋田藩の林政改革の政策決定過程を、加藤・芳賀(2013)はその改革の結果、藩営林が明治の官林に継承された森林資源の実態を、成田(2013)は廃藩置県後の官林に関する伐木規制を明らかにした。また浪川(2012)は藩営林と関係の深い幕末の村落の暮らしを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)昨年度「19世紀の秋田藩林政改革と近代への継承」を解明した。これに引き続き、この林政改革によって木山方を中心とした林政機構が整備され、最も重要な秋田杉地帯であった米代川流域の「能代木山」を能代木山役所の設置などによって掌握していく過程を明らかにした。また、その改革によって明治へ継承された森林資源の実態を示した。明治初期の林政について「空白期」とされ森林の乱伐・荒廃が強調されてきたが、大蔵省による官林の掌握と伐木規制が進むことを官林政策の展開と秋田県官林を例に解明した。(2)これまで歴史的・社会的学術調査の進んでいなかった北秋田市においては、北秋田市教育委員会との連携のもと、市民の協力・参画を得た古文書調査・整理のモデルケースを構築し、農村社会学で日本農村の一つのタイプとされた「東北型農村」について、地域社会史的解明を進めつつある。③横手市では「横手殖林社」を例に、近代地域社会において地域資源管理に士族が果たす役割を明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
新年度は最後の年度に当たり、以下の3点に集約する方向で、研究を進め、取りまとめをはかる。 (1)19世紀の秋田藩林政改革と官林の成立・展開―北東北を例に―(主な史料:国有林史料・秋田県庁文書) (2)地域社会における士族の役割と資源管理―横手殖林社を例に―(主な史料:横手殖林社史料) (3)東北型農村社会の展開と地域資源利用―北秋田市を中心に―(主な史料:北秋田市諸家文書) (3)については、このテーマに沿った新出史料が数多く発見されつつあり、市教育委員会・市民の協力を得た史料調査・整理の体制を構築しつつある。さらなる調査によって新たな地域史像を解明できる可能性が明らかになってきたため、研究の延長を視野に入れ、新たな外部資金獲得の構想を立案する予定である。
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