2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22380087
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
宇野 裕之 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部・環境科学研究センター・自然環境部, 研究主幹 (80442614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 雅之 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部・環境科学研究センター・環境保全部, 研究主幹 (40442610)
齊藤 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00183814)
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Keywords | エゾシカ / 狩猟努力量当りの目撃数 / 遺伝的空間構造 / ミトコンドリアDNA / マイクロサテライトDNA / 積雪水量 / 地理情報システム(GIS) / 生息地モデル |
Research Abstract |
H22年度(2008年分63,529件)及びH23年度(2009年分60,832件)の狩猟カレンダーを用いて5kmメッシュ及び市町村ごとの努力量当りの目撃数(SPUE)データを整備した。過去のデータと比較すると、2000年代に日本海沿岸地域で分布拡大が顕著にみられること、西部(日高・宗谷など)ではSPUE値が上昇している一方、東部(阿寒)ではSPUE値の低下が認められた。また、東部個体群の加入率の年変動とその要因について一般化線形モデルを用いて解析を行った結果、積雪が加入率を決定する主要因であることが示唆された。 1990年代に捕獲されたエゾシカ204サンプルと、2008~2009年に収集した211サンプルのDNA分析を行った。ミトコンドリアDNAからは5つのハプロタイプが検出され、地域的に3つの分集団に区分されることが判った。また、マイクロサテライト分析によっても3つの分集団が確認され、東北部及び西南部地域間でオスの分散行動が不活発になっていることが示唆された。 エゾシカの生息環境に関わる基盤情報として、既存情報に加えて新たにMODISを用いた積雪期間推定のアルゴリズムを開発し検証し地図化した。また、MAXENT(Maximum Entropy)Modelを用いて、1978年、1984年、1991年、1998年の各時期の制限要因を推定し、モデルへの影響度を分布確率との関係で検証した結果、積雪要因の制限が年々低下するとともに、1998年以降エゾシカの内的要因(前回分布からの距離)が相対的に高まる傾向を示した。 エゾシカの分布拡大のプロセスと要因を明かにするために、パーコレーションモデルを用いて分布拡大シミュレーションを行った。このモデルでは、周囲からの移入確率は対象セルにおける地理的要因に影響されると仮定し、狩猟者からの目撃情報をもとにパラメータ推定を試みた。モデルに用いる環境障壁として、GISデータを用いて、大規模河川の存在(川幅)、幹線国道の存在、人口密集程度、及び地形要因(尾根等)に係る5kmメッシュデータの構築を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
狩猟カレンダーによる努力量当りの目撃数データ、MODISを用いた積雪期間データ、大規模河川や幹線国道、人口密集程度に関するGISデータ等の整備を終え、パーコレーションモデルの構築と分布拡大シミュレーションを実施することができた。また、DNAを用いてエゾシカの3つの分集団を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、エゾシカの移動及び遺伝子流動の障壁となる景観要素及び越冬適地環境を抽出し、個体群構造に関わる地理的要因について明らかにする。また、平成22年度~23年度に整備したGIS情報をもとに分布(生息地)モデルの評価を行った上で、個体数変動に及ぼす要因解明のために空間明示型個体群動態モデルを開発し、多雪地域への分布拡大と個体数増加の要因を明らかにする。
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Research Products
(7 results)