2011 Fiscal Year Annual Research Report
亜寒帯汽水域の二次生産は何故高いのか?ー底生系の卓越とその維持機構の解明ー
Project/Area Number |
22380102
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
門谷 茂 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30136288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 勲 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (00195455)
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Keywords | 水圏環境 / 底生微細藻類 / 二枚貝 / 栄養塩 / 基礎生産 / 二次生産 |
Research Abstract |
本研究では、火散布沼における底生微細藻群集の塩分・温度変化に対する応答、比生長速渡から潜在的な生産能力の推定を試みた。具体的には、泥表面から5mmに含まれる微細藻類を試料とし、塩分・温度に対する反応を別々の実験系にて調査した。 塩分依存性についてみると、塩分変化に対する応答は各ステーション内・間において明瞭な差はみることが出来なかった。しかし塩分22.10と比較的低塩分であっても他と遜色ない生産が行われることがわかった。また底生微細藻類の生産には塩分より水温のほうが、影響が大きいことが示唆された。温度依存性と比生長速度についてみると、ほとんどの培養条件でクロロフィル極大に達した後、急速に減少した。高温度ほど生長速度が速く、クロロフィル極大値が大きくなる傾向がみられた。クロロフィル極大値は25℃でそれぞれ沼口で385mg/m^2、中央で249mg/m^2、最奥部で211mg/m^2となった。これらの数値は現場海域の各ステーションにおいて同程度の水温値における堆積物表層のChl-a量とほぼ同程度であり、室内実験で得られたChl-a最大収量、またその時の比生長速度を用いた現場海域における潜在的な生産能力の推定に役立つものと考えられた。クロロフィル極大に達するまでの比生長速度は、沼中央部の25℃で最大のμ=1.21(day)であり、最奥部の5℃,10℃で最小となりμ=0.29(day)であった。また15℃を境に高温度(25℃,20℃)と低温度(10℃,5℃)では生長速度に差がみられた。これは種組成の違いによるものとも考えられた。 一般に比生長速度は適正な水温以上または以下になるにつれ減衰していく。しかし本研究の温度帯で得られた比生長速度には減衰傾向はみられなかった。このことから、火散布沼における底生微細藻群集はより高水温に対する適応力を持っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
浮遊生態系と底生生態系のカップリングが、濃密である事が生産性の高さを保証している可能性が高いが、これまでの研究に置いて、基礎生産者やその消費者である底生動物群集の生物量の時空間分布と、生産性の推定をおおよそもてメルコとができた。これらの情報を総合する事により、亜寒帯汽水域における底生系の卓越が持続する理由を明らかに出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
汽水域における物質収支の定量化と他の生態系での同様の知見を比較し、他の生態系と比べてどのように位置づけられるかを明らかにする。これらの結果と、現場の様々な環境因子や生物量の観測値より物質循環過程を定量的に明らかにすることにより、汽水域の持つ生物生産構造の理解を深めるとともに、汽水域環境制御法の開発を指向する。
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Research Products
(5 results)