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2011 Fiscal Year Annual Research Report

特殊なアミノ酸を用いて深海生物が硫化水素を無毒化するしくみ

Research Project

Project/Area Number 22380107
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

井上 広滋  東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (60323630)

Keywords特殊環境 / 生理学 / 共生 / 適応 / 深海
Research Abstract

深海の熱水噴出域に生息する生物が、熱水中に含まれる硫化水素の毒性に対しどのように適応しているのかを、熱水噴出域固有生物の組織に特異的に蓄積しているチオタウリン、およびその前駆物質であるヒポタウリンを手がかりとして解明を試みている。
1. 生物採集と飼育実験:6月に海洋研究開発機構の研究船なつしま研究航海NT11-09を実施し、深海探査艇ハイパードルフィンを用いて研究材料となるシチヨウシンカイヒバリガイ等の無脊椎動物を採集した。また、船上で硫化物濃度や環境塩分の異なる条件への曝露実験を行い、解剖して凍結保存した。
2. 合成中間体の分析からの合成経路探索:高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるによるチオタウリン、ヒポタウリン、およびその前駆物質候補であるシステインスルフィン酸などの物質の定量法の改良を行った。前年度の研究において、前処理過程で一部の物質が変化してしまい、正しい定量ができていない可能性が示唆されていたが、本年度は前処理におけるpHを検討した結果、変化をかなり抑えることができるようになった。
3. cDNAクローニングと発現解析:前年度シチヨウシンカイヒバリガイより、ヒポタウリン合成経路を触媒するシステインジオキシゲナーゼ(CDO)、およびシステインスルフィン酸デカルボキシラーゼ(CSAD)のcDNA部分配列を単離していたが、本年度はCDOについては全長を得ることができた。CSADについては、配列解析は進んだがまだ一部未知領域が残されている。一方、上記のCDOおよびCSADcDNAの配列を利用して、リアルタイムPCRによるmRNAの定量系を確立した。そして、様々な硫化物濃度や環境浸透圧に曝露した個体について、発現量を比較したが、どのような条件でも高レベルで発現していることがわかった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は、1.生物採集、2.合成中間体の分析からの合成経路探索、3.cDNAクローニングと発現組織の解析、を目指してきた。
1.については、計画通り達成できた。
3.についても、「システインスルフィン酸経路」を触媒するCDOとCSADのcDNAのCDOは全長、CSADは殆どの部分を単離できた。また、両遺伝子のmRNA定量系も確立し、両遺伝子の発現レベルが環境条件に関わらず高いことを示すことができた。従って、CSAD配列の一部の未知部分を除き、目標は達成されたと考えている。
2.については、中間体分析のシステムを確立し、システインスルフィン酸経路の出発物質であるシステイン、中間体であるシステインスルフィン酸の検出を目指したが、両物質とも検出されなかった。最終産物であるヒポタウリンやタウリンは検出できており、また、標品として分析にかけたシステインやシステインスルフィン酸は正しく検出されることより、分析自体は正しく実施できていると考えられる。一般に貝類の組織には遊離のシステインが検出可能な濃度で存在することが知られている。3においてシステインスルフィン酸経路を触媒する酵素の遺伝子発現が高いことを考慮すると、本種ではヒポタウリン合成経路の活性が高く、システイン、システインスルフィン酸は素早くヒポタウリンに変換されることがその原因ではないかと考えられる。すなわち、熱水噴出域固有の貝類に特異的な性質を発見できたのではないかと考えている。

Strategy for Future Research Activity

システインスルフィン酸経路の存在を確実に証明するために、システインやそのさらに上流にある物質を投与して、システインスルフィン酸が合成されることを確認、または、システインやシステインスルフィン酸を投与してヒポタウリンが合成されることを確認したい。
また、合成経路においてシステインより上流の物質の動態を確認するためには、網羅的なメタボライト解析の手法が有用であると考えられる。従って、キャピラリー電気泳動法によるメタボローム解析を試みる。

  • Research Products

    (4 results)

All 2012 2011

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Whole-mount fluorescence in situ hybridization to visualize symbiotic bacteria in the gills of deep-sea mussels.2012

    • Author(s)
      Fujinoki M
    • Journal Title

      Aquatic Biology

      Volume: 14 Pages: 134-140

    • DOI

      10.3354/ab00385

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Comparison of the amount of thiotrophic symbionts in the deep-sea mussel Bathymodiolus septemdierum under different sulfide levels by using fluorescent in situ hybridization.2012

    • Author(s)
      Fujinoki M
    • Journal Title

      Fisheries Science

      Volume: 78 Pages: 139-146

    • DOI

      10.1007/s12562-011-0419-7

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 貝類のGAT-1から見たGABA輸送体グループの分子進化2011

    • Author(s)
      金城梓
    • Organizer
      平成23年度日本水産学会秋季大会
    • Place of Presentation
      長崎大学
    • Year and Date
      20110928-20111002
  • [Presentation] タウリン関連物質による熱水噴出域への適応機構2011

    • Author(s)
      井上広滋
    • Organizer
      第14回マリンバイオテクノロジー学会
    • Place of Presentation
      東海大学
    • Year and Date
      20110528-29

URL: 

Published: 2014-07-24  

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