2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22380108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西田 周平 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (70134658)
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Keywords | 海洋保全 / 環境分析 / 生態学 / 分類学 / 国際研究者交流 / インドネシア;マレーシア;フィリピン;タイ;ベトナム / データベース / 生物多様性 |
Research Abstract |
東南アジア海域における動物プランクトンの多様性に関する情報の整備・拡充を目的として以下の項目について調査・研究した。 1.動物プランクトン群集の時空間変動:インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイで過去に採集された試料について種を同定・計数した。フィリピンの沿岸性ヤムシ類については各種の分布パターンと群集構造が太平洋沿岸域とフィリピン島嶼内の海域で大きく異なることを示した。 2.分類学的知見の拡充:タイからPseudodiaptomus属のカイアシ類未記載種を見いだし、新種記載のための詳細な形態の観察と描画を行った。 3.遺伝学的解析:カイアシ類、アミ類、ヤムシ類について、前年度に引き続き分析・解析を継続した。この結果、少なくとも5種の東南アジア海域からの初採集個体を記録した。また、同種個体間に形態変異があることを見いだし、現在ミトコンドリアDNAのCO1遺伝子をマーカーとして遺伝的変異を解析中である。 4.動物プランクトンの間性・奇形を指標とした汚染状況の把握:富栄養化の著しいインドネシアのジャカルタ湾で、カイアシ類主要種に高頻度(>30%)で奇形個体が出現することを見いだした。 5.動物プランクトンデータベースの拡充:インドネシア、ベトナム、マレーシア、タイにおける動物プランクトンの分類、分布に関する研究史を総説した。マレーシアとベトナムの動物プランクトンについては、それぞれ2300件、1600件の個体数密度のデータを電子化した。また、アジア・西太平洋海域のヤムシ類に関する文献を調査し、計12.000観測点の定量的分布データを電子化した。これらデータの解析により、ヤムシ類の種多様性の極大が亜熱帯海域にあり、また分布様式が水温と強い相関を示すことを明らかにした。 以上、東南アジアの動物プランクトンの多様性に関する新知見を得るとともに、既存情報の整備を順調に進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内および国外の研究協力者との協働が予定通り進み、各国から動物プランクトンの多様性に関する成果が順調に得られたため。なお、本研究の初年度まで協力関係にあった国際プロジェクト(学振多国間協力事業と全海洋動物プランクトンセンサス)は2010年に終了したが、2011年から新たに学振のアジア研究教育拠点事業(沿岸海洋学)が開始されたため、東南アジア各国の研究者との連携が途切れることなく進められたことも大きな要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究方針を堅持して、研究の柱とした(1)沿岸域における動物プランクトン群集の時空間変動、(2)分類学的知見の拡充、(3)遺伝学的解析、および(4)動物プランクトンの問性・奇形を指標とした汚染状況の把握の各項目について解析を進めるとともに、これらの結果を総括し、動物プランクトンの多様性に関するデータベースを拡充・整備する。
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Research Products
(11 results)