2012 Fiscal Year Annual Research Report
ネコレトロウイルスの変異と進化:新たなウイルス出現と病原性発現機構の解析
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22380168
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西垣 一男 山口大学, 獣医学部, 准教授 (20401333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 元 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60163804)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 内在性レトロウイルス / 組換え / 変異 / 進化 / ERV-DC / FeLV / レトロウイルス |
Research Abstract |
猫白血病ウイルス(FeLV)のenv遺伝子について遺伝子型を決定したところ、GenotypeI, II およびIIIの3つのグループに分類可能であり、日本で蔓延しているFeLVの遺伝子型はgenotypeIとgenotypeIIであった。genotypeIにはさらに7つのクレード(Clade1~7)に分類可能であり、また、日本で蔓延しているウイルスの遺伝子型と地域性について密接に関連していることが明らかとなった。これは変異したウイルスがそれぞれの地域において、定着していることが示唆される。また遺伝子型によるFeLVの分類とFeLVのサブグループ分類とは異なることを明らかにした。また、猫白血病ウイルスは、env遺伝子において、内在性FeLVとの組換えを起こしており、その組換え体は猫体内で生じている事が示唆された。ガンマレトロウイルスに分類される家猫の内在性レトロウイルス、ERV-DCと命名した13カ所のプロウイルスの単離を行い明らかにした。これらのうちERV-DC10およびERV-DC18というプロウイルスは、自律増殖性のある感染性ガンマレトロウイルスであることを発見した。ERV-DC10は染色体のC1q12-21の位置にマッピングされ、家猫の約40%がホモまたはヘテロで持つことを明らかにした。さらに、FeLV-Aの感染家猫においてERV-DCと組換えを起こした新規のFeLVを発見し、FeLV subgroup D(FeLV-D)と命名した。このFeLV-Dはenv遺伝子がERV-DC由来であル組換えウイルスであり、新たに家猫の体の中で出現しているものと思われる。また、猫の内在性レトロウイルスが新たなウイルスの出現や、それら自身の水平伝播の可能性を示唆する所見が得られ、猫の内在性レトロウイルスの新たな役割を発見することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の達成度は「おおむね順調に進展している」。その理由としては、これまでの研究成果を学会での発表と論文による発表ができたことが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.FeLVのgag遺伝子をもとにしてウイルスの遺伝的多様性を明らかにする。gag遺伝子による遺伝子型分類とenv遺伝子による遺伝子型分類について比較検討を行い、ウイルスの遺伝子組換え現象について明らかにする。 2.FeLVの新規ウイルス株を明らかにするために、シュードタイプウイルスを作成し新規のサブグルプであるかどうか検討を行う。 3.新規に明らかになったFeLV-D株および内在性レトロウイルスであるERV-DCのウイルス学的性状を明らかにする。また、これら新規ウイルスの病原性についても検討する。 4.FeLV-DおよびERV-DCの受容体を単離するための基礎的データーをとる。おもにウイルス干渉実験による実験を進める。
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