2011 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージと筋線維芽細胞を基軸とした慢性腎臓病の進展機序の解明と治療戦術
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22380173
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山手 丈至 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50150115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑村 充 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20244668)
竹中 重雄 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (10280067)
秋吉 秀保 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50420740)
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (20580369)
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Keywords | 慢性腎臓病 / マクロファージ / 筋線維芽細胞 / 肝線維化 / 胆管周囲線維化 / 皮膚創傷治癒 / Hsp25 / カルポニン |
Research Abstract |
慢性腎臓病(CKD)は、進行性の腎線維化の病態で、その増悪にはマクロファージと、マクロファージから産生される線維原性因子により誘導される筋線維芽細胞が重要な役割を演じる。しかし、これら細胞の機能的な特性の全貌は未だ解明されていない。本研究では、CKDに出現するマクロファージと筋線維芽細胞の多彩な特性を解析し、さらに肝硬変(肝線維化)あるいは創傷治癒過程で見られる皮膚の線維化病変についても同様の解析を加え、比較することで、腎線維化の本質の解明を試みている。本年度の実績は以下の通りである。 1.筋線維芽細胞の誘導因子と起源細胞の特性:シスプラチン(CDDP)誘発のラット腎線維化モデルを用いて形成される筋線維芽細胞の細胞骨格発現を解析した。筋線維芽細胞は、α-平滑筋アクチン抗体(SMA)、ビメンチンやデスミンを発現することをすでに以前の研究で明らかにしているが、さらに腎の筋線維芽細胞はThy-1やカルポニンを発現することを見出した。Thy-1発現は、未分化な間葉系細胞にみられることから、筋線維芽細胞の由来は血管周囲細胞にある可能性が示された。また、カルポニン発現細胞はα-平滑筋アクチン発現筋線維芽細胞と一致することが示された。筋線維芽細胞に収縮能があることが分かった。 2.α-Naphthylisothiocyanate(ANIT)により誘発された胆管周囲の線維化病変では、抗原提示マクロファージが常に高発現し、貪食活性を示すマクロファージがやや遅れて現れることを明らかにした。また、四塩化炭素誘発肝細胞傷害後の線維化では、食食活性の高いマクロファージが主体として現れ、その周囲にヒートショックプロテイン25(Hsp25)が特異的に発現することが示された。Hsp25がマクロファージの特性に変化を与えることが示唆された。 3.皮膚線維化病変の解析:皮膚線維化病変の解析では、肉芽組織にみられる筋線維芽細胞は、ビメンチンとα-平滑筋アクチンを発現するが、デスミンの発現はほとんど見られないことを明らかにした。腎線維化での筋線維芽細胞と特性が異なることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画として、シスプラチン(CDDP)誘発のラット腎線維化モデルを用いて以下の実験を行う予定であった。 1.出現するマクロファージ群の機能解析:機能特異的な分子に対する免疫組織化学と遺伝子解析法(mRNA)を用いて、異なる病期において出現するマクロファージ群の多様な機能特性を解明する 2.筋線維芽細胞の誘導因子と起源細胞としての体生幹細胞との関連:筋線維芽細胞の細胞骨格発現の解析をα-平滑筋アクチン抗体の他に、ビメンチンやデスミンに対する抗体で免疫染色し線維化の進行に伴う細胞骨格の発現の違いを詳細に解析する。また、カルパインとThy-1の発現についても解析を加える。 3.肝線維化病変の解析:チオアセトアミド誘発肝線維化病変の解析を行い、腎線維化との比較を行う。 4.皮膚線維化病変の解析:創傷治癒過程での皮膚線維化病変を解析し、腎線維化との比較を行う。 以上のうち、「1」については、MHC class II(OX6)、スカベンジャーレセプター(SRA-E5)、Galectin-3(Gal-3)、カルシウム結合型蛋白(Iba1)を用いた免疫染色解析は、動物実験を行い、現在進行中である。また、腎線維化に出現するマクロファージの特性を比較する目的で、胆管線維化と創傷治癒線維化でのマクロファージの特性を解析しているが、この解析も進行中である。よって、一部は次年度に行う必要があることから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
推進方策: 当初の目標として設定している犬や猫の自然発生の線維化病変(腎・肝以外にも膵線維化を加える)の解析に加え、シスプラチン(CDDP)誘発のラット腎線維化モデルを用いて以下の実験を行う。この腎線維化モデルは、線維化部位に出現するマクロファージと筋線維芽細胞の機能特性を解明する上で有用である。 1.出現するマクロファージ群の機能解析:一部の実験は完了しているが、さらに二重免疫染色などを行うことでマクロファージの機能特性を明らかにする。特に、MHC class II(OX6)、スカベンジャーレセプター(SRA-E5)、ヘムオキシゲナーゼ(GTS-3)、NADPH酸化酵素(NQO1)、Galectin-3(Gal-3)、カルシウム結合型蛋白(Iba1)について詳細な解析を加える。 2.マクロファージと慢性腎病変形成に係わるTリンパ球との関連:MHCクラスIIにより誘導されるTリンパ球の種類をCD4とCD8で、さらにB細胞をCD20で同定することで、リンパ球の出現パターンと局在を明らかにする。二重免疫染色等を多用する。 3.筋線維芽細胞の誘導因子と起源細胞としての生体幹細胞との関連:筋線維芽細胞の細胞骨格発現の解析をα-平滑筋アクチン、ビメンチンやデスミンに対する抗体以外にThy-1発現についてin vitroでの解析を実施する。Thy-1の発現が筋線維芽細胞の分化や機能(細胞外基質の産生)を規定しているとされることから、in vitroを中心に行う。 4.肝線維化、膵線維化と皮膚線維化のラットモデルを用いて、同様の解析を行い、腎線維化に出現するマクロファージと筋線維芽細胞の特性を比較解析する。
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[Journal Article] Heterogeneity of macrophage populations and expression of galectin-3 in cutaneous wound healing in rats2011
Author(s)
Juniantito, V., Izawa, T., Yamamoto, E., Murai, F., Kuwamura, M., Yamate, J
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Journal Title
J Comp Pathol
Volume: 145
Pages: 378-389
DOI
Peer Reviewed
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