2011 Fiscal Year Annual Research Report
発生・分化過程における哺乳類染色体の普遍的構築原理とその意義
Project/Area Number |
22380188
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
奥村 克純 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30177183)
|
Keywords | エピジェネティクス / クロマチン構造 / DNAメチル化 / DNA複製 / DNA損傷 |
Research Abstract |
哺乳類染色体の普遍的構築原理におけるDNAのメチル化の重要性を提示する目的で以下の成果を挙げた。 (1) DNMT阻害剤の5-aza-2’-deoxycytidine (5-aza-dC),または,DNMT1特異的siRNAによりDNMT1を減少させた細胞において,分子コーミング法を用いて複製フォーク進行速度を解析し、通常細胞に比べて複製フォーク進行速度が減速すること,UHRF1とDNMT1の同時ノックダウンでは複製フォーク進行速度の減速は有意に回復することを示した。また,複製起点からの複製フォークの進行は,DNMT1ノックダウン細胞または5-aza-dC処理細胞では左右非対称となり,DNMT1とUHRF1の同時ノックダウンでは左右差は通常細胞レベルまで回復した。これらの結果から、複製フォーク進行速度の減速または停止は、DNAメチル化レベルの減少過程で一時的に生じるヘミメチル化DNAに結合して解離できなくなったUHRF1に複製フォークが衝突することが原因というモデルを提示した。 (2) 複製フォークの衝突によりDNA損傷が生じるモデルを検証した。DNMT1ノックダウン細胞では,ヘミメチル化DNAが通常時より多く出現し、UHRF1が多くクロマチン上に結合していた。また,DNMT1ノックダウン後のDNA損傷レベルはUHRF1のノックダウンにより有意に低減した。さらに、細胞内在性UHRF1をノックダウンし、ヘミメチル化CpG結合ドメイン(SRAドメイン)変異UHRF1を発現させると、DNMT1枯渇によるγ-H2AXの蓄積が有意に低減し,上記モデルを支持した。 (3) その他,分子コーミング法に用いるガラスコーティング法の改良に成功した。また,繰越金を用いて次世代シーケンサーによってDNA低メチル化に伴っておこるゲノム上の損傷部位を網羅的に同定することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に挙げた「複製タイミングドメイン」形成に重要な役割を果たすと考えているエピジェネティクスについてDNA低メチル化によってDNA損傷が誘導される新たな現象を発見し,このメカニズムについてモデルを立て解析を行い,モデルを支持する結果を得つつある。すなわち,「複製タイミングドメイン」に関しては進んでいないが,当初の計画には含まれていない新しい現象の発見につながっており,上記の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
この2年間の研究により,計画に挙げた「複製タイミングドメイン」形成に重要な役割を果たすと考えているエピジェネティクスについてDNA低メチル化によってDNA損傷が誘導されるという新たな現象を発見し,このメカニズムについてモデルを提唱している。今後はこれについて重点的に研究を推進し,本研究の最も大きな成果としたい。
|