2011 Fiscal Year Annual Research Report
医原性有害事象の発生率、防止可能性に関する臨床疫学的研究
Project/Area Number |
22390103
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
森本 剛 近畿大学, 医学部, 教授 (30378640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
作間 未織 近畿大学, 医学部, 講師 (60349587)
吾郷 美奈恵 島根県立大学短期大学部, その他部局等, 教授 (20209844)
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Keywords | 医療・福祉 / 社会医学 / 医療安全 / 臨床疫学 / 医療の質 |
Research Abstract |
日本における医原性有害事象の疫学を明らかにするために、前年度に作成した医原性有害事象の客観的評価基準及び症例報告フォームを用いて、急性期病棟入院患者を対象に前向きコホート研究を研究実施計画通りに実施した。 国内の2教育病院の急性期病棟において、前年度からトレーニングを受けた看護師レビューワーが常駐し、患者のカルテから経時的に患者背景(潜在的リスクファクター)を記録した。同時に、インシデントレポートや疑義照会、患者クレームなどを併用して、医原性有害事象やエラーに関するデータ(潜在的イベント)を収集した。潜在的イベントは薬剤、手術、手技・検査、医学的判断、看護、リハビリ、管理などの多岐にわたる。また、患者に及ぼす影響には出血、中枢神経系(転倒含)、アレルギー・皮膚症状、代謝・肝機能異常、心血管系(バイタル)、消化器症状、腎障害、呼吸器系、骨髄抑制・血球低下などが含まれ、包括的に医原性有害事象を捉える。 対象患者はA教育病院では外科系3診療科、内科系3診療科、ICUで570人、B教育病院では外科系8診療科、内科系7診療科、ICUで874人、の計1444人であった。これら対象患者を入院から退院までフォローし、潜在的イベント(一次データ)の抽出を行った。 現在、追加情報をフォローするとともに、集積した患者データファイルを二次レビュー用に整理している段階である。今後、医師レビューワーによる二次レビューを行った後に医原性有害事象やエラーを同定する。また、研究補助員がデータベースを作成する。これらの結果を臨床疫学的に解析することで、日本における医原性有害事象の発生率や防止可能性、リスクファクターなどが明らかになると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
入院患者の重症化、入院期間の短縮化、医療安全への関心の高まり、が重なり、急性期コホートでの1患者あたりのカルテ情報や潜在的イベントの発生数が予測より大幅に多くなっている。その結果、レビュー時間が大幅に延長し、レビューワーの雇用数を増やしたり、追加情報を収集したりして、対応しているが、二次レビューや解析を含めた研究期間は24年度までかかると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本では従来困難と考えられていた、医原性有害事象のコホート研究を、研究計画通り実施できているが、上記に書いたように、日本で初めての研究であることもあり、予想を大幅に上回る多くの人的・時間的資源を要している。現状では、急性期病棟における医原性有害事象が医療政策上最も緊急性を有するため、研究費などの資源を急性期病棟入院患者に集中して完成させ、他の慢性期病棟や外来については、取りかかりを目標とする。
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Research Products
(13 results)